原田勝広の視点焦点:SDGs、真の担い手はZ世代

少し頭の整理をしたいと思います。2000年より後に成人となった若者をミレニアル世代と呼びます。生まれで言うと1981年から1996年の間あたり。これに対し、注目はZ世代。それ以降の生まれといいますから25歳までくらいでしょうか。

このZ世代はミレニアル世代とよく似ていますが、デジタルパイオニアではなく、デジタルネイティブとか。流動的なアイデンティティを持つグローバル市民で既存のルールにとらわれない人たちだそうです。

3・11を経験しており、社会課題への関心が強い。起業家精神が旺盛。SNSを駆使して発信力があり、オンタイムで仲間とコミュニケーションできる。少し持ち上げ過ぎのような印象も受けますが、ひとつだけはっきりしているのは、彼らに共通する地球の未来への不安です。気候変動とそれに伴う台風・ハリケーンの大型化、森林火災、生態系の破壊、海洋プラスチックに代表される海洋・河川の汚染。こうした地球の抱える難題は若い世代の未来を暗くしています。

前述した国際会議ではこんなZ世代が集まった「海洋プラ問題を解決するのは私たちだ!」というセッションがありました。学校が違う100人の高校生が分野、地域を越えてチームを作り、解決プログラムを作りました。

コンテストで選ばれた3チームはのアイデアは、

1、海のプラスチックは、ペットボトルなど大半が川から流れ込むため、水車をつけたシャケの形のお掃除ロボット「スイシャケ号」を使って海に流れ込む前の廃棄プラスチックをアジアの川で回収する。これをリサイクル工場へ送り、企業で製品化を図る。流れ込みが多い中国などアジアの川からスタートする。

2,海洋汚染の一因となっているのが微小な合成繊維片(マイクロファイバー)。一番排出量が多いのは家庭の洗濯機だが、最近、急増しているコインランドリーに着目して削減グッズの普及に力。きめ細かい網目で濾過する洗濯ネットとコーラボール作戦で無数の吸盤の凹凸が洗濯中に発生するマイクロファイバーを絡めてキャッチしてくれる。

3,消費者の意識を変える。例えば企業側が「環境配慮の製品です」とキャンペーンしているのに、「安いものを買う」消費者も多い。そこでSNSで企業へ真の環境配慮製品の開発などを働きかける一方で、消費者にもきめ細かい製品情報を発信する。特に小学生向けにビジュアルな環境の教育教材を作成し、Z世代がZ世代へ新たな価値を伝える。

なかなかのアイデアです。SDGsの真の担い手はZ世代かもしれません。彼らの環境意識は高く、先頭グループはどんどん起業しています。

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs#Z世代

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