分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を使い、たとえ寝たきりや外出困難になっても仲間と共に働ける世界初のカフェ「分身ロボットカフェ」が2021年6月21日に東京・日本橋にオープンした。このプロジェクトを主導してきたのが、「人類の孤独の解消を目指す」を理念に掲げるオリィ研究所代表の吉藤健太朗氏こと、吉藤オリィさんだ。吉藤さんは小学5年~中学2年まで不登校で引きこもりを経験している。不登校を乗り越え、孤独の解消に人生を捧げる吉藤さんが、今子どもたちに伝えたいこととは。(三原 菜央=スマイルバトン代表)

オリィ研究所代表の吉藤健太朗さん、通称は吉藤オリィ

世界初「分身ロボットカフェ」

2016年に、田中将大さんや錦織圭さんらとともに、米Forbes紙の「日本を代表する30歳未満」の30人に選ばれたロボット研究者の吉藤オリィさん。吉藤さんが手掛けた「OriHime(オリヒメ)」というロボットは、目しか動かすことができない寝たきりの人が、パソコンへの視線認証だけで、遠隔地のロボットを操作することができる。言うなれば分身ロボットだが、病室で孤独に過ごす人たちがOriHimeを使って同窓会に参加したり、旅行に行くといった人とのコミュニケーションを実現した。2021年6月21日には、病床から社会参加を実現する「分身ロボットカフェ」もオープンさせた。

寝たきりの人などが分身ロボットを通して接客する「分身ロボットカフェ」

5年の月日を経て、唯一無二のカフェをオープンした吉藤さんに、立ち上げの理由を聞いた。「分身ロボットカフェでは、『例え寝たきりだとしても、仲間と一緒に働ける場』を実現させたかったんです。今はコロナで、移動ができない不便さを全ての人が感じていますが、コロナ以前から寝たきりの人たちは、とにかく困っていたわけです。『自分は何もできない』とさえ思っていたり。じゃあ彼らがどう社会に参加できるか?を考えたときに、『リアルな場に参加できるツール』が必要だとわかり、分身ロボットを開発しました。さらにロボットを通して接客するという役割を用意することで、寝たきりの人にも第3の居場所が生まれ、社会参加につながると考えました。理由を問われない場所=居場所だと捉えたときに、役割というのは、居場所を作る上で非常に重要なキーワードになります」

孤独の解消に、人生を捧げる

精力的に活動する吉藤さんの原動力は、会社の理念でもある「人類の孤独の解消を目指す」という強い思いにある。なぜ、孤独の解消に人生を捧げようと思ったのだろうか。

「私自身が孤独になりたくないからです。不登校の3年半があまりにも辛かったんですよ。気づけば池の前に立っていたり、ベランダから飛び降りたいと思ったさえあります。そんな日々を変えたのが、ロボットという夢中になれることや、憧れの人との出会いでした。そこから少しずつモチベーションも上がってきて、素晴らしい同世代との出会いもあり、17歳のときに自分の命の使い方を決めました。それが、孤独の解消に人生を捧げる、でした。とにかく死ぬまでに、この世の中に孤独を解消する方法を一つでも二つでも生み出すということを生き続ける理由にしています」

自身の不登校経験が、今悩んでいる子どもたちのヒントになればと2015年から学校での講演活動にも力を入れていた吉藤さん。その講演の中で、特に子どもたちに伝えたいことをまとめた書籍が2021年5月に出版された。今まさに不登校に悩む子どもたちへどんなメッセージを伝えているのだろうか。

「不登校の理由や状況は一人ひとり異なるものなので、一言でコレということは言えません。でも私が不登校だった頃、『世の中は常に正しくて、私が間違っている』と思い込んでいたんですね。でも『こうあるべき』なんてことはどこにも存在しなかった。そしてロボットとの出会いや憧れの人との出会いを通して、少しずつ状況が変化していきました。そういった経験から、好きなものだけではなく憧れの人であったり、こうなりたいという目標が見つかることで、今の苦しみや、頑張っている意味が分かってくることもあります。どうか少しでも心の動くものや人に出会ったら、会いに行ったり、触れてみてほしいです。いい人との出会いが人生をつくる、そう私は信じています」