■2030年までに販売台数の50%をEV化■

BMWグループはサーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトを加速する。2030年までに世界で販売する新車の5割をEV化することを目標に据えており、高電圧バッテリーの原料はリサイクルした二次材料の割合を増やしていく。サーキュラーエコノミーにシフトしたことで、電気モーターに紛争鉱物であるレアアースを使わなくなった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

BMWのサステナビリティ戦略について話す佐藤毅広報部長=6月30日、都内で

BMWは6月30日、都内でサステナビリティ戦略に関する記者発表会を開いた。同社のオリバー・ツィプセ会長は今年5月の年次株主総会で、2030年までにCO2排出を2億トン削減すると宣言した。これは、100万人超の都市が年間に排出するCO2の量の20倍以上に相当する。

ツィプセ会長の「循環型経済の先駆者を目指す」という発言が表すように、企業戦略の核にサステナビリティを据えた。2020年末から生産拠点で使う電気を自然エネルギーに切り替え、パリ協定の1.5度目標に整合した目標計画を持つ。この計画は、SBTに承認されている。

生産段階(スコープ1と2)では、2030年までに1台当たりのCO2排出量を2019年比80%減、その他、製品のライフサイクル全体(スコープ1から3)で1台最低33%削減を目指す。

バッテリー・セル(バッテリーを構成する個々の電池)と高電圧バッテリーに関しては、最大30%の再生アルミニウムを含み、バッテリー・セルの主要原材料には再生ニッケルを最大50%使った。コバルトの使用量は10%未満に減らした。こうした取り組みによって、電気モーターに紛争鉱物であるレアアースを使わずにいる。

2030年に世界で販売する新車の50%をEV化し、同社の予測では今後10年以内に累計1000万台のEVを販売していくという。

ツィプセ会長は欧州自動車工業会の会長も務める。すなわち、BMWの戦略を知ることで欧州の自動車業界の動きが見えてくる。欧州の主だった国では2025年から2040年にかけてエンジン車の新車販売が禁止される。こうしたことを背景に、コロナ禍で自動車販売台数が減る一方で、電気自動車の販売シェアは堅調だ。

2021年4月期の欧州でのプラグイン車両シェアは約15%で、100%電気自動車(BEV)は7.1%だった。販売台数で比較すると、昨年同月比で136%増だ。2020年1~9月の乗用車販売台数が昨年比29.3%減(欧州自動車工業会)だったことを考えると、その伸びは大きい。

脱ガソリン車に向けて、政府の支援も手厚い。オランダでは、EVの新車を購入かリースする場合、4千ユーロの補助金が出る。EVなら中古車の購入でも2千ドルが出る。2025年までこの制度は続く予定だ。英国では、3万ポンド以下のBEVに最大で2500ポンドの補助金が、フランスでは4万5千ユーロ以下のBEVに7千ユーロの補助金が出る。

EUは気候変動対策の施策として、グリーンディールを掲げている。この目標では2050年までに欧州全体で二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにすることを目指しているが、欧州が排出するCO₂の約4分の1が輸送セクターによるものだ。そのため、乗用車のEV化へのシフトは目標達成へのカギとなる。

だが、EVが普及するためには、EVに対応したまちづくりが必要になる。BMWが30日に開いた記者発表会に登壇した国際モータージャーナリストの清水和夫氏はこう語る。

「電気自動車の課題は航続距離。航続距離を伸ばすためには大きいバッテリーが必要になる。だが大型のバッテリーを搭載すると送電網にストレスが掛かってしまう」

清水氏はEVを普及させるためには、社会のインフラづくりから見直していく必要があると強調する。「急速充電や代替燃料のインフラを増やし、ショートレンジで走りながらたびたび充電することが現実的な解ではないか」と提案した。

電気自動車を普及するには、まちとして車と共存する「シナリオ」が不可欠と強調し、「シナリオを描かない限りEVだけ増やしても燃費は高いまま。CO2は減らない」とした。

「脱炭素に向けて、EV化はあくまで手段。目的は化石燃料を使わないこと。各国や地域で事情が異なり、それぞれの地区で温暖化の防止につながる施策を取るべき。冷媒のフロンも問題だ。アマゾンやアフリカ、シベリア、中東には電気も水素もない地域がある。移動手段がEVだけになると、それらの地域はスラム化してテロ行為が多発するかもしれない。健全なエコシステムができてはじめて地球のCO2は減っていく」