なぜ企業は「CSR」に取り組む必要があるのか

ニック木村の「今さら聞けないサステナビリティ」(2)

「SDGs」「ESG」「CSR」。サステナビリティを取り巻く状況は日々変化し、新たな用語も増えた。そもそもサステナビリティ領域は、どこから理解すれば良いのだろうか。カシオ計算機で約12年間サステナビリティの管理職を務めた「ニック木村」こと木村則昭・オルタナ総研フェローが「今さら聞けないサステナビリティ」の疑問にお答えする。

■「CSR」「ESG」「SDGs」はどう違うのか――ニック木村の「今さら聞けないサステナビリティ」(1)はこちらから

【Q2】企業にはなぜCSR(企業の社会的対応力)(※1)への取り組みが必要なのでしょうか。CSRに取り組まないからといって法的な罰則はありませんよね?

※1 一般的にCSRは「企業の社会的責任」と訳されますが、このコラムでは「企業の社会的対応力」と訳します

【A2】罰則はありませんが、CSRに取り組む・取り組まないは、「企業の価値」に大きな影響を及ぼすのです。

その背景には20世紀から21世紀への変革期における「企業に対する評価軸の変化」というパラダイム・シフトが関係しています。 つまり、評価軸として「経済的パフォーマンス」よりも「社会への貢献度合い」をより重要視する考えへと大きく方向転換されたのです。

20世紀には「企業の価値=市場的価値」という図式が成立していました。

「市場的価値」というのは、「株価」、「売上高」、「利益」など金額や数値(=財務情報)で表される価値です。

つまり、良い業績(売上・利益)を上げ、株主に良い配当を出す経済的パフォーマンスの高い企業が、「価値の高い企業」とされていたのです。そのため中には、「業績のためなら環境や人権は二の次」という企業も多かったのです。

しかし、20世紀の後半から末期にかけて、社会課題(※2)が顕著になり、人類・社会の持続性を阻害する要因が多発しました。それらの原因に企業活動の結果も含まれることから、社会に対して影響力の大きい企業への社会課題解決の期待が高まりました。

※2 具体的には、人口爆発、環境汚染、地球温暖化、水不足、生物多様性の喪失、資源・エネルギー問題、途上国の人権問題・貧富の差・格差社会、テロ脅威の増大、感染症の多発などを指します

こうした環境を背景に、「企業の価値=市場的価値×社会的価値」 という21世紀型の新たな図式が生まれました。

ここで重要なのは、「企業の価値」は「市場的価値」と「社会的価値」の掛け算だということです。どちらか一方がゼロであれば、他方がどんなに優れていても、結果的にはゼロになってしまうのでどちらも大事ですが、より「社会的価値」に重きが置かれるようになったのです。

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kimuranoriaki

木村 則昭(オルタナ総研フェロー)

1982年上智大学外国語学部英語学科卒業後、2021年5月まで39年間カシオ計算機株式会社に勤務。初めの約27年間はシステム商品の海外営業を担当。その間オーストラリアに約2年、米国に約4年の駐在を経験。その後の約12年間はCSR推進室(後にサステナビリティ推進室)室長としてコンプライアンス及びCSR(サステナビリティ)のグループ内への浸透を推進。グローバルコンパクトの原則に基づき、ISO26000をガイダンスとして、特に「人権」を重点課題として取り組みを進めた。また、2015年にCSRリーダー組織を立ち上げボトムアップによるCSRのグループ内浸透を図った。 2018年度よりオルタナが主催するサステナビリティ(SUS)部員塾の講座「CSR検定3級試験過去問演習と解説」の講師を担当。特定非営利活動法人環境経営学会理事。

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キーワード: #CSR#SDGs

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