日本の住宅は、古くなると資産価値が下がり、まだ使える状態でも取り壊されることが多い。耐震や環境などの性能が価格に反映されないからだ。そうした矛盾を解決し中古住宅市場を活性化することで、ストック型社会へ転換しようという動きが高まっている。
■中古住宅の適正評価がストックにつながる
不動産や建築など業界を横断する有志団体「ニッポン住宅維新会議 ハ会」は、2月15日に第5回目のシンポジウムを東京・渋谷で開催。ツイッター上の議論がきっかけで昨年6月に始まった「ハ会」は、リノベーションやマーケティング、住宅診断、不動産仲介、建築設計などの業界をリードする有志の集まりで、住宅や都市の問題を論じてきた。
総集編の今回は、ゲストに民主党の中村てつじ参議院議員などを迎え、社会をフローからストック型に転換するには、既存住宅の資産価値を高めることが必要だと訴えた。
欧米では建築の個人資産に占める割合が30~40%なのに比べ、日本は約10%という。築年数だけで経済価値が評価されること、新築優遇の税制、流通や維持管理制度の不備などが原因だが、それを解決すれば中古住宅の価値を適正に見直すことができる。
■情報公開で中古住宅市場を活性化
既存住宅の流通数は現状で年間約17万戸。ハ会では10年後に百万戸を目標に掲げる。そのためには市場ルールの公正化が必要だ。仲介手数料を確保するために物件情報を囲い込む業者も少なくない。買い手や借り手に供給情報が伝わらない慣行は、「エンドユーザーにとって幸せではない」とパネラーの内山博文氏(リビタ常務取締役)は改善を求めた。
また、現状の空き家が760万戸という供給過多について、地域別の住宅総量目標や需要予測をハ会は提案。一方で「まずは市場にデータを供給する(政府の)努力が必要」とゲストの田村誠邦氏(アークブレイン代表取締役)はコメントした。地域別の空き家率や個々の住宅性能の情報が公開されれば、マーケットの判断が働くということだ。
シンポジウムの最後に、国交省の「住生活基本計画」に対し、今回の議論内容をまとめたパブリックコメントを送付。住宅産業や市場に示す方向性が読み取れない政府の計画書を見ながら、「住宅のヴィジョンをつくるのは誰なのか?」と長嶋修氏(さくら事務所代表取締役)が問いかけた。大臣や官僚だけがつくるものではないだろう。
フェイスブックから革命が起きる時代だ。ツイッターから始まった住宅維新がブームとなり、住環境が変化する日も近いか。ちなみに「ハカイ」とは、よくない制度や業界の壁をハカイする「ハウスの会」という意味だそうだ。(オルタナ編集部=有岡三恵 2011年2月17日)