NPOがシングルマザーのエッセイ発表

(画像はイメージ)

シングルマザー、いわゆる母子家庭は全国で123万世帯、30年前の1.5倍です。貧困率が圧倒的に高いと話題になりますが、差別や偏見もあって、「顔が見えない」状態が続いています。おかげでシングルマザーのことは理解されず孤立しているというのが実相ではないでしょうか。

そんな中で、NPO法人シングルマザーシスターフッド(東京、吉岡マコ代表)は母の日キャンペーンの一環としてシングルマザーのエッセイを発表しました。シングルマザーにとって、書くこと自体が癒しとなるし、勇気を出して自身をさらけ出すことによって社会の理解を得、受け入れてもらいたいという真摯なメッセージを発信しています。

離婚は当事者の個人的な問題かもしれませんが、原因となるDV、アルコール依存症、ギャンブル、病気、あるいは結果として発生する貧困、不安定な雇用、差別、いじめ、不登校、家出などは社会の病弊なのです。

ひとり親は特別な存在ではありません。誰もがそうなる可能性があるのです。シングルマザーは毎日一生懸命生きています。私たちと変わりません。ただひとつ、彼女たちが特別なのは離婚やDV、偏見によって深く傷ついていることです。つらい体験で、自信を失い、自分は人生の失敗者だ、社会の落伍者だと引け目を感じている人が多いのです。

私たちにできる事は、それを理解し、ともに生きることです。苦しい立場にある人をどこまでサポートできるかが社会の成熟度を測るモノサシだとすれば、シングルマザーは日本の社会を映し出す鏡ともいえます。偏見を捨て、シングルマザーの実相を知るためにまずはエッセイを読んでみましょう。

子どもができたら離婚?別れても嫌がらせ

こんな理由で離婚することもあるのかと驚いたのは面長よしこさんのエッセイ。子どもがいない家庭を理想とする夫が、妊娠した途端「離婚しよう」。子どもへの暴言もひどくなり、ついに離婚。すると、子どもがいなくなって心に余裕ができた元夫はやさしくなり、月1の面談もなごやかで養育費もちゃんと払ってくれているという。離縁は絶縁ではないようです。夫婦の在り方は難しいですね。

別れても、しつこく嫌がらせを繰り返されるケースもあります。外国人と結婚した光さん、父親としての自覚に乏しく、安定した仕事も住む場所もない夫に離婚の意思をつげると攻撃が始まりました。違法だという弁護士からの脅迫の手紙、光さんのSNSにログインし、誤解を招く投稿。そんな暴挙で不安と恐怖に襲われました。英語に堪能な両親が矢面に立ってくれ、なんとか困難を乗り越えることができたそうです。

シングルマザーは時に、友人、知人、場合によっては親とも関係を断たれます。孤立する中で仕事に頑張りすぎて体調を崩す人が跡を絶ちません。nozomiさんはこう書いています。

「悲しみや嫌なことがあると、川を流れていく葉っぱに、それを次々に乗せていくイメージを思い浮かべると心が落ち着きます」

エッセイ集を読みながら、少しホッとしたのは、シングルマザーを支える周囲の人たちが少なからず存在することでした。非婚で出産したでんさんの場合はこんな具合です。

「妊娠中に、それほど親しいとは思っていなかった人が雪かきを手伝ってくれた。灯油缶を定期的に運んできてくれた友人。何かあった時のためにと連絡網を作ってくれた仲間。生まれてきた娘をただただかわいがってくれた近所のおばあちゃん、バシバシ娘の写真を撮ってくれたおばちゃん。みんなが少しずつ手助けや気遣いをしてくれました」

母と娘、ふたりだけの生活が不安で息苦しくなると、アパートの窓から見える満月を愛する娘とふたりで見上げ、幸せをしみじみと味わうのだといいます。

離婚も案外悪くない

親の離婚は事情のわからない子どもを傷つけます。そのことでシングルマザーは苦労します。夫から不倫を告白されたかむなさん。パパのいない子ではかわいそうだから仮面夫婦でもいいかと離婚に踏み切れずにいましたが、長男は動揺することなく、「ママが笑って暮らせることが大事」。このひとことで離婚を決意できました。

その息子は中学生の時、不登校になり、大変な思いをしたのですが、その時、もがき苦しみながら「普通のレールに乗ることと、僕が大事にしていることは違う」と話してくれました。今はその長男に救われた思いです。シングルマザーはマイノリティで、いわゆる普通ではないかもしれませんが、「ありのままの私を受け入れてくれる人に囲まれて楽しく暮らしたい。離婚も案外悪くない」。

みみさんも娘の家出や不登校で苦労をしました。離婚したのは娘が小学校2年の時。大粒の涙を流し、泣きじゃくる姿に、子どもには残酷なことをした、もうこの子を悲しませてはならないと決意します。しかし、娘は嘘をつき、約束やルールを守らないなど悪い子になってしまいます。中学生になると不登校、家出がおさまらず捜索願を出したこともありました。

それまで周りにひとり親であることを隠してきたみみさんですが、追い詰められ自身が変わる必要性を感じます。

そして、まずやったことは人とつながることでした。心配をかけまいと連絡をとっていなかった故郷の両親、何度も家に来てくれたことのある友人たち。思い切って皆に悩みを打ち明け助けを求めたのです。行政や学校とも積極的に関りをもちました。その結果、意外にも多くの人が支えてくれました。温かくて頼もしい言葉やアドバイス、そして知らなかった情報。娘は学校に戻り、家出も次第になくなりました。

「シングルマザーだからこその自信と楽しさ、誇り、充足感に満ち溢れているこの頃です。離婚から7年目にしてようやくシングルマザーである自分に価値があるのだと思えるようになりました。今の娘と私が最高」。

とも子さんインタビューーDV避け公園漂流

どれも重いエッセイですが、逆境の中でしっかり生きようとしているシングルマザーたちの心意気が伝わってきます。エッセイの実相のさらに奥に一歩踏み込もうと、とも子さんに直接インタビューしました。

ともこさんのエッセイは衝撃的でした。夫のDVから逃れるためひとり息子を抱え昼間から近くの公園を漂流していたというのです。

――ひとつの公園のベンチに数時間。長居は妙に思われるので午後には別の公園へと移動するわけですか。

とも子さん:はい。暗くなると眠くてぐずる子を自転車に乗せて自宅へ帰りました。コンシェルジュがいる高層マンションでした。夫は不規則な交代制の勤務で昼間の在宅は頻繁でした。投資もしていたので、マーケットが開いている時間帯は、子どもが歌ったり、少しでも騒いだり泣いたりすると「静かにしろ」と大声をだし手をあげる。そして無理やり外へ出されるのです。

暴力だけでなく、料理にうるさい。味がどうとか、品数も決まっていた。地獄の日々でした。1年くらいはこんな漂流生活で、高層マンションから飛び降りたら楽になれるかもと思ったこともありました。

――離婚を決意したきっかけは何ですか

とも子さん:うつ病になり精神科にも通いました。二人目を妊娠していたのですが、心労やストレスで出血しました。お腹の子が、ママ、もうそんなに頑張らなくてもいいよ、とSOSのメッセージを発してくれたんだと思い、その夜、別れる決断をしました。

今思うと、夫に洗脳されていたんですね。子育てが終わって社会復帰した時にちゃんとできるように、お前を指導してやる、怠惰な部分を直してやる、と言われ、私もそう信じて疑いませんでした。しかし、弁護士から、それってDVですと指摘され、目が覚めました。

PTSDで当時の事がフラシュバックするので、辛いことを思い出して料理をつくることができません。気が付くと涙があふれています。長男も、箸やスプーンの持ち方など食べ方が悪いと、夫からよくたたかれました。その後遺症で5歳になるまで箸もスプーンも持とうとせず、手づかみで食べていたほどです。

――実家に帰り両親と暮らしているということですが、お仕事はどうされたのですか。

とも子さん:国家資格を生かして助産師を開業、産後のママと赤ちゃんの健康相談、育児支援をしています。資格があっても就職は全滅でした。シングルマザーは村にとっては異質な存在で、正規の社員として働くことに抵抗感があるようです。

村を出て東京へ行ったのにまた戻って来たよという冷たい目で見られるのです。就活の面接試験で離婚の原因まで聞かれました。自分で開業するしかほかに道がなかったというのが正直なところです。

――社会の偏見を感じますか。

とも子さん近所のひとたちは普通に接してくれ感謝していますが、行政は相談に行ってもサポートしてくれません。実は元夫が養育費を払おうとしないため離婚裁判中なんです。正式に離婚が成立していないというだけで、例えば保育所に入る際に不利なんです。最大限配慮すると説明されるものの、制度上の差を感じます。

――NPO法人シングルマザーシスターフッドのセルフケア講座に参加した印象を聞かせてください。

とも子さん2020年、まだ未来に希望の持てない頃でしたが、オンラインで家から出なくてすむので参加しました。当時は失敗者の代表みたいに周囲から見られているのではと極度のプレッシャーを感じており、何もやる気がしませんでした。講座で、何か話してと言われても、自分の感情を表す言葉もなくしていたのです。

その時、参加者のひとりが「セルフケアは贅沢じゃない」と言ったのです。えっ、そうなんだと救われた思いでした。給付金をもらっている身で贅沢してはいけない、高級な紅茶なんか飲んじゃいけない、余裕のある生活なんかしちゃいけないと思い込んでいたので、何か安心できました。

心身をストレッチし、紅茶を飲んでゆっくり本を読めるようになりました。講座に参加している画面の自分を見て、今ここに生きている、仲間と話していると確認し、自信を取り戻せたのです。正面から過去と向き合うことができ、前向きなエッセイも書けました。

みなさん、とも子さんの話を聞いて、いかがですか。シングルマザーに対する社会の真の理解と温かい支援がいかに必要かわかっていただけたのではないでしょうか。とも子さんは元気を取り戻し「今は、お金を貯め、時間を工夫し、自分のためにエネルギーを使う、これを心がけて前向きに生きていきたい」と語ってくれました。本当に頑張ってほしいと思います。