記事のポイント
- 休眠預金でNPOを支援するJANPIAが企業とNPOのマッチングを促進
- 「スキルボランティア」を戦略的に経営に落とし込む企業は増えている
- JANPIAは企業にボランティアを促し、企業価値の向上を後押しする
一般財団法人日本民間公益活動連携機構(以下JANPIA)は経団連と連携して、企業とNPOのマッチング支援に乗り出した。事業活動で培ったスキルやノウハウをNPOで生かす「スキルボランティア」を戦略的に経営に落とし込む企業は増えている。社会貢献活動を通して、社員に自社の存在意義を体感してもらうことが狙いだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
JANPIAは11月30日、ボランティア・プロボノマッチング会の報告会をオンラインで開いた。今年3月にJANPIAが開いたマッチング会で連携した企業とNPOが成果を発表した。
JANPIAは休眠預金等活用法をもとに子ども支援などを行う非営利団体への助成を行う。2019年度から累計で116事業に助成を行い、その総額予定額は151.4億円に及ぶ。2022年4月末時点で706団体がJANPIAからの助成を受けて活動している。
マッチング会を開いたのは資金的な支援に加えて、寄付・ボランティア文化の醸成に一役買うことが狙いだ。その背景には、社会貢献を自社の経営に戦略的に落とし込む企業が増えていることがある。
経団連が2020年に実施した社会貢献に関する意識調査では、53%が「成長の機会」と回答した。経団連は企業行動憲章を改訂中だが、「従業員による自発的な社会参画の支援」を強調する予定だ。
■先進企業とNPO10組のマッチングを促進
3月に開いたマッチング会にはJANPIAが2019年度に採択した15の非営利団体と経団連会員の13社が参加した。
参加した13社中6社と非営利団体15団体中10団体がマッチングした。マッチング件数で数えると10組になる。
その10組は4月から11月まで活動した。NPOと企業の連携を円滑に促進する仲介役としてJANPIAなど中間支援NPOが入った。約半年間の活動を終えて現時点でも支援の継続・強化につながった連携は3組、1組はこのマッチングを機に資金支援にも発展した。
成果報告会では、次の3組が発表した。支援者向けの報告書を改善した「NPO法人岡山NPOセンターとセールスフォース・ジャパン」、企業向けの営業資料の作成を支援した「NPO法人いわて連携復興センターとジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ」、経理業務の効率化を目指した「NPO法人フリースクール木のねっことPwCあらた」。
各企業の担当者はマッチング期間で行った支援活動を踏まえて、日常の業務にどう活用できるのかを話した。
■スキルボランティアは「無理せず小さいことから始めよ」
スキルボランティアを自社の経営に落とし込み、企業価値の向上につなげるポイントは何か。NECの社会貢献推進室長としてグループ全体の企業市民活動をけん引した実績を持つJANPIAの鈴木均シニア・プロジェクト・コーディネーターは3つあると言う。
一つ目のポイントは「トップダウンでの実施」だ。スキルボランティアを企業経営の中で重要な戦略と位置付けるには、トップダウンで取り組むことが欠かせないと言い切る。
「ステークホルダー資本主義を実践する基本的な考え方として、コミュニティーへの貢献は社員を中心に取り組むというものがある。社員が取り組むことで、社員だけでなく、その家族にも会社に対するプライドが醸成される。結果的にコミュニティーでの存在意義が高まる」
社会的責任に関するガイダンス「ISO26000」でも、社会貢献を「Community Engagement」と表現している。パーパス経営も人的資本経営でも、重要視する指標に「社会への貢献度」がある。そのためにもトップが率先してスキルボランティアに取り組むことが重要だ。
二つ目のポイントは、「全社運動にしていること」だ。「社内のチームワークを醸成するために、トップの方針のもとで全社運動にしていることがカギだ」(鈴木氏)。ただし、単純に強制するのではなく、自律的に実施することが重要だという。
実施方法は、コミュニティー(国)の実状や事業部・職場・グループ会社ごとに任せて自律的に実施させることが良いと話した。
最後のポイントは、「スキルボランティアは無理に実施しないこと」だ。逆説的ではあるが、鈴木氏は「無理せず小さいことから始めることで、長く続く」と語句を強める。
社内で広めていく際には、「できる(スキルを持つ)人ができる時間に無理せず実施」をスローガンに置くことを勧めた。