富士山頂の積雪からマイクロプラ、進むプラスチック汚染

記事のポイント


  1. 富士山頂の積雪から初めてマイクロプラスチックが見つかる
  2. 極小サイズのプラスチックは繊維より破片が多い
  3. 今後は北極や南極のエアロゾルや雪氷も分析する

早稲田大学を中心とする研究グループが、富士山頂の積雪から初めてマイクロプラスチックを検出した。平均で雪1リットル当たり119個。登山者の行かない場所で採取した雪から見つかったため、これらのプラスチックは人為的影響を受けない自由対流圏に吹く風で運ばれてきたものと考えられるという。プラスチック汚染は待ったなしで進行しているようだ。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

富士山でプラスチック汚染が進む

■大半は極小サイズの破片

マイクロプラスチックが見つかったのは富士山測候所の西方で、登山者の行かない場所だ。そのためか、8割以上が破片で、登山者の着衣に起因するような長い繊維状のものは見つからない。食品容器などに使われるポリプロピレンが多く、サイズは平均で約37マイクロメートル(約0.037ミリメートル)と極小だ。

研究を率いた早稲田大学創造理工学部の大河内博教授によると、1リットルの雪にマイクロプラスチックが平均119個。この数は、他の研究者の計測によるエベレストや南極の積雪よりもやや多く、北極よりも少ない。分析法が異なるため、富士山頂のような極小サイズのプラスチックはそれらの地域では見つかっていない。

そのため、大河内教授らの研究チームは北極や南極でのエアロゾル、雪氷の分析を進め、「結果が出てきたら文献値との違いを示したい」と語る。

「今後、観測数を増やしつつ、モデルによって大気中へ放出されたマイクロプラスチックがどのように全地球を回っていくのかを解明したいと思っている」(大河内教授)

富士山頂の積雪から見つかったマイクロプラスチック(提供:大河内博・早稲田大学教授)

上空高く上ったプラスチックが、どのように地球の周りを巡っているのか。地球規模での汚染状況の実態が解明される日も近そうだ。人間がプラスチックを使い続ける限り、ポイ捨てをしなくてもマイクロプラスチックは発生する。プラスチックはどこへ運ばれ、最終的にどこに溜まるのだろうか。

環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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キーワード: #脱プラスチック

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