記事のポイント
- 「指標化」は、世界の課題解決に関する取り組みを活性化させた
- すべての関係者が役割を果たすという共通認識へのパラダイム転換を生んだ
- 一方、「最も重要なことは数字(指標)では見えない」という指摘も潜む
「社会を変えるということは、制度や事業が生まれることではなく、一人ひとりの『モノの見方』が変わることだ」。これは筆者も常に社会変革の本質であると感じている一言である。日本社会にとっては、特にこの言葉の重要性は高い。日本社会は「空気社会」と言われるように、あまり絶対的な価値軸がない。それだけに、実体験を通じてパラダイム変化することで大きな社会変化が生まれやすい社会とも言えるのだ。(日本ファンドレイジング協会代表理事=鵜尾 雅隆)
今、非常に重要な「進化させたいパラダイム」がある。ひとつは、社会課題解決への取り組みを評価する取り組みが「(高く)評価される」というパラダイムである。
2000年に国連で決まったミレニアム開発目標(MDGs)を皮切りに、2015年のSDGsへと、世界は課題解決の指標化と成果測定の大きな流れを経てきている。
指標化は、多くのエネルギーとリソース、そして連携を通じて世界の課題解決に成功をもたらした。
ある意味、社会課題解決を一握りの国連関係者や専門家だけが担うというパラダイムから、地球上のすべての関係者が役割を果たすという共通認識へのパラダイム転換が生まれた。しかし、この動きには、「最も重要なことは数字(指標)では見えない」というとても重要な課題への指摘がある。
社会課題の解決に専門的に取り組んできた人々の視点からすると、受益者の共感的観察による「指標化どころか言語化さえ難しい本質」に向き合うことが不可欠である。
しかし、指標化や成果評価を通じて達成状況を測定することには、別の意味で2つの重要な機能も存在する。
一つは、成果評価が専門家の視点では見逃していた効果的な支援策に気づくきっかけになるということだ。