障がい者の自立へ、車いす280キロメートルの行進で訴え

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記事のポイント


  1. コスタリカで障がい者らが自立を求め、車いすで280キロメートルを行進した
  2. この行動が世論を動かし、同国で障がい者自立推進法の成立につながった
  3. コスタリカでの法制度化の動きは、中南米各国にも波及している

障がい者の自立した生活を訴え、中米コスタリカで280キロメートルを車いすで行進し、世論を動かして法制度化を実現した女性がいる。障がい者自立生活センター「モルフォ」のウェンディ・バランテス代表だ。車いすでの行進はコスタリカ社会の関心を集め、同国の「障がい者自立推進法」の成立につながり、その動きは中南米各国にも波及している。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

障がい者の自立を求める車いすでの行進が
コスタリカの世論を変えた
(写真提供:JICA)

■日本での経験が行動を起こすきっかけに

バランテス代表は2歳半の時に筋ジストロフィーを発症し、そこから車いすでの生活が始まった。コスタリカは1996年に中南米で初となる「障がい者の機会均等法」を制定したものの、多くの障がい者は当時、自宅で家族による介護に頼らざるを得ない生活をしていた。

「家族のサポートなしでは食事や外出ができず、自身の意思ではなく家族の都合に合わせて生活するのが当たり前」。そう思っていたバランテス代表が大きな衝撃を受けたのが2009年、35歳のときに参加した日本でのJICAの研修だ。

JICA の研修員受入プログラムの一環として、研修の受入団体となったのが、特定非営利活動法人メインストリーム協会(兵庫県西宮市)だ。同協会は、障がい当事者が主体となって運営する自立生活センターとして、日本で先駆的に自立生活の実践と発信に取り組んでいた。

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研修に参加したバランテス代表は、そこで「自分よりも重い障がいのある人が、自らの意思を明確に伝え、必要な介助を得ながら一人暮らしを実現している」姿に強い衝撃を受けた。この経験をきっかけに、帰国後、JICA が支援する取り組みとも連携しつつ、コスタリカでも障がい者の自立生活支援を普及させようと行動を起こす。

JICAの授賞式でのバランティス代表
モルフォのバランテス代表。
JICA国際協力賞の授賞式にて
(写真提供:JICA)

■世論を動かした車いすでの280キロメートル行進

2011年、仲間とともに同国サンホセ州南部に、障がい者自立生活センター「モルフォ」を設立し、障がい者への介助者派遣を定める「障がい者自立推進法」の制定に向けて取り組み始めた。

2016年、バランテス代表らは介助者派遣の公費負担を求める制度化を訴え、280キロメートルに及ぶ距離を手動の車いすで行進した。その様子をメディアが広く報じ、世論を喚起し、同年「障がい者自立推進法」が成立した。

コスタリカ政府は障がい者の自立生活を重要課題に位置づけ、必要予算を確保し、モルフォは、中南米で初めて障がい者への介助者派遣サービスを公的な財源で運営・提供するパイオニアとなった。

現在モルフォは、介助者の養成研修や介助派遣サービスの審査などを手がけ、自立推進法の運用部分を担う活動を行う。

■26年1月にはJICA国際協力賞を受賞へ

バランテス代表の動きはコスタリカにとどまらない。

2020年には、アルゼンチン、ボリビア、チリ、エクアドル、メキシコ、ペルーなど中南米14カ国が参画する「ラテンアメリカ自立生活ネットワーク(RELAVIN)」を結成し、今もその代表を兼務する。

ホンジュラスやコロンビアでの自立生活センターの設立支援など、障がい者主体で社会変容を進める運動を通じて、中南米の障がい者の人権向上に寄与した実績は、高く評価され、2023年には「障がい分野のノーベル賞」と言われる世界的に権威のある「ゼロ・プロジェクト・アワード」を受賞した。そして2026年1月には、JICA国際協力賞を受賞した。

バランテス代表は、JICAの授賞式で、「障がい者にとって、インクルージョンは当たり前に必要なこと。それが目標でなくなるために闘い続けてきた。障がい者が障がいを通して認識されるのではなく、すべての人がそうであるように、まるごとの尊厳と受容を受けるためにこれからも努力を続ける」と力をこめた。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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