地域課題の解決に取り組む銀行員、背には「道徳銀行」の文字

記事のポイント


  1. 背中に「道徳銀行」の文字を背負って地域課題の解決に取り組む銀行員がいる
  2. 「日本一暮らしやすい埼玉」を目指す埼玉りそな銀行の社員たちだ
  3. 金融機関のアセットを活かし、地域のウェルビーイング向上に注力する

背中に「道徳銀行」と書かれたパーカーやポロシャツを着て地域課題の解決に取り組む銀行員がいる。「日本一暮らしやすい埼玉」を目指す、埼玉りそな銀行(さいたま市)の社員たちだ。金融機関としての強みやネットワークを活かし、空きスペースを「子どもの居場所」に設計し直すなど、地域のウェルビーイング向上にコミットする。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

埼玉りそな銀行は「道徳銀行」の文字を背に、地域課題の解決に力を入れる

■失敗からの学びと地域への感謝を胸に

「銀行の信頼が揺らぐと、取り付け騒ぎが起きるといわれる。だが、りそなショックの時、地域のお客様の多くが私たちにかけてくださったのは、『こういう時だからこそ預金を預けるよ』『株を買ったよ』という応援の言葉だった」

埼玉りそな銀行経営企画部の渋澤勉グループリーダーは、新入社員だった当時の出来事をそう回想する。2003年、りそな銀行は資本不足に陥り、約2兆円の公的資金の注入を受けて実質国有化された。

「当時を知らない世代が社内に多くなってきている中、失敗からの学びと地域への感謝は、常に私たち社員が思い出さないといけない」と渋澤氏は話す。

りそなホールディングスの傘下には、埼玉りそな銀行のほか、りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行の4銀行で全国822カ所(2025年3月末時点)に店舗を展開する。埼玉りそな銀行は127店舗を有し、うち124店舗が埼玉県内に拠点を置く。

「当社は埼玉県と一心同体だ。県内での事業は1878(明治11)年の第八十五国立銀行にさかのぼり、預金・貸出金ともに県内シェアは40%超だ。地域の金融インフラとして県内では責任ある立場にある。地域における責任をしっかり果たしていくことが、当社の成長機会の獲得につながる」(渋澤氏)

渋沢栄一翁が揮毫した「道徳銀行」の下で。
同社経営企画部の鈴木学サステナビリティ推進室長(右)と
同社経営企画部の渋澤勉グループリーダー(左)

■背には渋沢栄一翁の筆跡による「道徳銀行」の4文字

従業員が着るパーカーやポロシャツには、背に「道徳銀行」の4文字が刻まれている。

「道徳経済合一」を唱えた渋沢栄一が、道徳的経営で地域から絶大な信頼を得ていた同社の前身の一つ、旧黒須銀行(埼玉県入間市)に宛てて揮毫(きごう)したものだ。

埼玉りそな銀行は、この「道徳銀行」の精神を引き継ぎ、道徳経済合一の理念が息づく地域金融機関として、目指す姿に「埼玉県の皆さまに信頼され、地元埼玉とともに発展する銀行」を掲げる。

埼玉りそな銀行は、渋沢栄一翁との関わりが深い

実際にこれまで、同社の呼びかけで、行政・地域団体・企業らがつながり地域課題の解決を図ってきた。

■空きスペースを「子どもの居場所」に

例えば、県・市町村などの自治体、子ども支援団体や個人、地元企業、教育機関などと幅広く連携、子ども食堂や放課後の子どもの学習支援など、さまざまな子ども支援活動への注力もその一つだ。

背景には、銀行業務の省力化などによって、店舗の空きスペースや未利用施設が生まれたこともある。金融機関は利便性が高いところに拠点を構えている。このアセットを地域で活用してもらおうと考え、地域の方々のニーズに応える空間へと再設計してきた。

そのなかで広がりを見せているのが、「りそなYOUTH BASE(ユースベース)」などの子どもの支援拠点だ。

埼玉県は、2021年度から2026年度までの5年間で、「子どもの居場所」を800カ所設置することを目標に掲げる。この方針に沿って、同社では2022年の「YOUTH BASEせんげん台」(埼玉県越谷市)を皮切りに、浦和、川越など県内8カ所に子どもの居場所等に活用できる共創空間を開設した。2025年3月末現在、県内の「子どもの居場所」は826カ所に上った。

せんげん台支店3階の「YOUTH BASEせんげん台」は平日は毎日オープン。
地域の子ども支援団体と連携し、学習支援や外国にルーツのある子どもの日本語教室、食事の提供、クリスマス会など親子向けのイベントにも活用する。
(写真提供)埼玉りそな銀行

■「こどもまんなかアクション」の一事例に

埼玉りそな銀行の子ども支援の取り組みは、こども家庭庁が2026年2月に開催した「こどものまわりのおとなサミット2025」でも紹介された。

このサミットは、同庁の「こどもまんなかアクション」の2025年度報告と合わせて実施したもので、同社以外に、NPO法人ベビースマイル石巻(宮城県石巻市)、一般社団法人未来の準備室(福島県白河市)、NPO法人じっくらあと(石川県輪島市)、一般社団法人JUNTOS(愛知県豊田市)、南九州大学(宮崎県都城市)の子ども支援活動も事例として紹介した。

埼玉りそな銀行で、企業と地域・支援団体をつなぐ仕組みづくりを手がけてきた同社経営企画部サステナビリティ推進室の鈴木学室長は、「お手伝いしたい企業はたくさんいる」と、企業との連携を呼びかけた。

埼玉りそな銀行の鈴木学室長は「お手伝いしたい企業はたくさんいる」と呼びかける

■取引先も顧客も、地域共助に動く
■「道徳銀行」らしい行動は社内で評価

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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