記事のポイント
- 東日本大震災を契機にできた認定NPO法人SETが書籍を発行する
- 311以降、震災後の地域づくりに約15年関わってきたノウハウをまとめる
- 地域で活動したいと考える若者に書籍を届けるプロジェクトも行う
東日本大震災を契機にできた認定NPO法人SET(セット)は、15年の支援活動で培ったノウハウを書籍にまとめる。同団体は岩手県陸前高田市広田町を拠点に活動しており、「関係人口」を増やすなど、震災後の地域づくりに貢献してきた。縁もゆかりもなかった土地でコミュニティを築いた知見を書籍にし、地域で活動したいと考える若者に届ける。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

セットが設立したのは2011年。東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市では、人口減少や担い手不足が深刻化していた。
復旧・復興が進むなかで、地域の将来を担う人材をどう育てるかが課題となり、都市部の若者と地域の人々が共に学び、挑戦する場をつくろうと活動を始めたのがセットの原点だ。地域を学びの場に変え、人の挑戦を後押しするという理念を掲げる。
■年3000人の学生を巻き込む
同団体の三井俊介・理事長も、東日本大震災をきっかけに陸前高田市と関わるようになった一人だ。三井・理事長は2012年3月に法政大学を卒業後、縁もゆかりもなかった陸前高田市広田町に移住した。広田町は人口約2500人の漁師町だ。
震災で大きな被害を受けた地域に身を置きながら、若者が地域に関わり続ける仕組みづくりに取り組んできた。外から来た若者が地域の人々と共に暮らし、学び、挑戦する環境をつくることが、地域の未来を支えると考えたからだ。
これまで、都市部の若者と地域をつなぐ多様な事業を展開してきた。大学生が地域に滞在しながら課題解決に取り組むスタディツアーやインターンシップ、地元の中高生向けのキャリア教育などだ。修学旅行生を地域の家庭で受け入れる民泊事業も行った。
特に民泊型の防災学習プログラムは全国でも珍しい取り組みとして注目され、年間約3000人規模の学生が陸前高田を訪れている。
こうした活動を通じ、セットは被災地との関係人口を着実に増やしてきた。これまでにセットのプログラムなどを通じて岩手県を訪れ、地域と継続的に関わるようになった人は延べ1.5万人に達している(2025年時点)。
観光ではなく、滞在や地域活動への参加を通じて地域と関係を築いた人々であり、人口減少が進む地方に新たなつながりを生み出してきた。こうした交流をきっかけに80人以上の若者が岩手県に移住しており、地域の新たな担い手として活動している。
■クラウドファンディングで300万円集める
震災から約15年にわたる活動の知見や実践事例を一冊の書籍としてまとめ上げるにあたり、クラウドファンディングに挑戦する。地域で挑戦する人々に届けることを目指す。
特徴は、書籍を販売するのではなく、寄付によって制作し、社会課題に取り組む若者や地域の担い手に「ギフト」として贈る仕組みを採用したことだ。
プロジェクトでは書籍の制作費や印刷費、全国への配布費用などを賄うため、目標金額250万円を掲げた。3月11日時点で300万円を突破した。3月13日まで募集している。
三井理事長は、「15年間大切にしてきたのは、一人ひとりの想いに寄り添い、共に汗をかき、関係性という種を蒔き続けることでした。これから出版される本は、その種をさらに遠くへ、多様なフィールドへ届けるための共通言語です」と話した。
震災をきっかけに始まった取り組みは、地域と若者を結び付ける新しい社会モデルへと発展しつつある。セットは、人と人の関係性を基盤とした地域づくりを軸に、人口減少時代の地方の可能性を示す考えだ。
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