ナフサが不足するとエンジンオイルが作れない理由

記事のポイント


  1. ホルムズ海峡の封鎖で、原油だけでなくナフサの供給にも大きな支障が出ている
  2. これを機に「こんなものまでナフサから作られていたのか」と気付く製品は多い
  3. その代表例の一つが、エンジンオイルに代表される潤滑油である

ホルムズ海峡の封鎖で、原油だけでなくナフサの供給にも大きな支障が出ている。政府は必要量を確保していると説明するが、現場では塗料や溶剤、潤滑油などが品薄だ。「こんなものまでナフサから作られていたのか」と気づかされる製品は多いが、その代表例の一つが、エンジンオイルに代表される潤滑油である。(オルタナ客員論説委員/技術士・財部明郎)

米国・イスラエルがイランの首都テヘランを2月28日に爆撃し、指導者を殺害したことから始まった対イラン戦争。その後、イランはホルムズ海峡を封鎖。これによってペルシャ湾岸諸国から原油やナフサの輸入がほぼ止まった状態になっている。

政府はナフサの必要量は確保されているというが、ナフサから作られるものは多種多様であり、塗料や溶剤など実際の現場では品切れするものがある。品切れになって初めて、「ああこんなものまでナフサが原料になっていたのか」と驚かされる。その一つがエンジンオイルに代表される潤滑油だ。

潤滑油は一般に重油から製造される。なぜナフサが不足するとエンジンオイルが品切れになるのだろうか。それは、エンジンオイルの性能を上げるために合成潤滑油が使われるようになっているからだ。

■潤滑油はどう作られるのか

潤滑油には鉱油系と合成系があるが、量的に多いのが重油から作られる鉱油系である。原油は日本に輸入されると、まず常圧蒸留という操作が行われる。これは原油を350℃程度まで加熱して蒸発させ、沸点の差によっていくつかの成分に分ける操作である。

原油が蒸発した成分は沸点の低い方からLPG、軽質ナフサ、重質ナフサ、粗灯油、粗軽油であり、このうち軽質ナフサが一般にナフサといわれるものだ。

一方、この蒸留操作では蒸発しない成分もあり、これは常圧蒸留塔の下部に溜まってくる。この蒸発しない成分を常圧残油(AR)といい、一般には重油として使われる部分だ。鉱油系の潤滑油はこのARが原料となる。

潤滑油というのは、ねばねば、どろどろして機械にまとわりつく性質が必要で、これにはARが適している。一方、品不足が問題となっているナフサは、原油から採れる成分のうち、常温常圧で液体のものとしては最も沸点の低い成分で、最も沸点の高いARとは対極にある。

ナフサは水のようにさらさらしていて、しかも簡単に蒸発してしまうから、そのままでは潤滑油になることはない。

ただし、ARもそのままで潤滑油になるわけではない。まずARにはアスファルト分が含まれる。これは道路舗装に使われることからわかるように固まってしまう成分なので、減圧蒸留や溶剤脱歴という方法によって取り除く。

さらに使用する温度が変わっても、粘度があまり変わらないようにするため、芳香族という成分を溶剤で取り除く。また硫黄分や窒素分は劣化の原因となるから、これは水素化精製という方法で取り除く。

さらに、ARに含まれるワックス分は低温で固まってしまうから、これも脱ろう装置という設備で取り除く。という具合にARのうち潤滑油としてふさわしくない成分をどんどん取り除いていって、最後に残る油が潤滑油基油(ベースオイル)といわれるものである。

最終的にはこのベースオイルを何種類かブレンドしたり、酸化防止剤や清浄分散剤、流動点降下剤などといった添加剤を加えたりして製品とする。これが一般的な潤滑油の作り方だ。

(この続きは)
■高性能エンジンオイルを支えるナフサ
ナフサが不足すると潤滑油がつくれない理由

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財部 明郎(オルタナ客員論説委員/技術士)

オルタナ客員論説委員。技術コンサルタント。九州大学大学院工学研究科応用化学専攻修了後、1978年に三菱石油(現ENEOS)入社。本社、製油所、研究所、技術調査会社等を経て2019年退職。技術士(化学部門)。工学修士。ブログ「世界は化学であふれている」を公開中。石油産業誌に『明日のエコより今日のエコ』連載中。著書「バイオディーゼルとSAFの話」、「バイオエタノール」、「カーボンニュートラル燃料」、「E10ガソリンの基礎知識」等

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