論説コラム
ジャパン・プラットフォーム(JPF)で外務省に期待された役割は公的資金(ODA)の提供だ。当初年間5億円だった助成金は50億円以上に増額され、この点での貢献が大きいのは間違いない。NGOとの連携は外交青書にも記載されており、NGOがODA資金で外交の一翼を担うのは歓迎されるべきという考え方もある。しかし、実際に現場で起きているのは、助成金への過度の依存によるNGOの財政面での劣化とトラブルの頻発だ。なぜ異変が起きるようになったのか。
■外務省、権限を離さず
JPF立ち上げ前のちょっとしたエピソードを紹介しよう。企業、NGOとの調整に奔走していた最中に大蔵省(当時)が突然、意外なことを言い出した。
「JPF構想は外務省にはギリギリまで内密に」。担当官庁を外すとは、といぶかる周囲に、その理由をこう打ち明けた。「構想が漏れると外務省につぶされるから」。それまで助成金は外務省が直接NGOに出していた。大変な権限である。ところが、JPFができると決定権はそちらへ移ってしまう。外務省が認めないのではという読みのようだった。
それでも発足当初は、自分が出す助成金とあってJPFが決定権を確保していた。しかし、案の定というべきか、外務省は担当者が変わった途端、助成金の「承認の権利」を持ち出し、すぐに最終決定権を取り戻してしまった。
外務省がJPFの理念を理解していないことが明るみに出たのが、「NGO拒否事件」である。2002年、外務省は東京で開催されたアフガニスタン復興支援国際会議への大西健丞JPF代表(当時)の出席を拒否した。
大西代表が新聞で「お上の言うことは信用できない」と発言したのを見つけて怒った有力国会議員が外務省に圧力をかけたものだ。役人は政治家に弱い。発足当時の担当で、NGOの味方のはずだった秋元義孝課長(現宮内庁式部官長)さえ「大西はやりすぎだ。もう切るしかない」と言いだし、関係者をがっかりさせた。
■「助成金は捨て金」か