ユヌス氏、被災地支援に意気込み

都内で開催された「女性経営者ミーティング」で

グラミン銀行の創業者でノーベル平和賞を受賞したムハメド・ユヌス氏がこのほど来日し、女性経営者50人と東日本大震災の被災者支援について考えるセミナーが都内で開催された。同氏は、「今後はソーシャル・ビジネスの仕組みで、被災地支援をしていきたい」と話している。

ユヌス氏は、利益を追求するのではなく、社会問題の解決を志向するビジネス「ソーシャル・ビジネス」を提唱してきた。貧しい人向けに小額融資を行うグラミン銀行を1983年に設立し、2006年にはノーベル平和賞を受賞した。

グラミン銀行の借り手の97%は女性である。ユヌス氏によると、「女性は人を喜ばせたいという思いが強い。融資したお金は他者のために使われることが多く、家族やコミュニティに良い影響を与える」という。そのため、女性経営者やジャーナリストなど日本の女性リーダーと被災地支援について話し合いの場を設けることで、多様なアイデアが出ると考えた。

会場では、4、5人のグループに分かれ、被災地支援のアイデアについて話し合った。避難所にいる高齢の女性に仕事を与える「ばあちゃんずネットワーク」というアイデアも出た。3月11日を境に、「被災者」として一括りにされてしまった女性たちに仕事の機会を与え、本来持っていたスキルを取り戻してもらいたいという思いからだ。

バングラデシュ中央銀行は、今年3月、ユヌス氏が1999年にグラミン銀行の総裁に再任された時に、政府の事前承認を得ていなかったとして、強制的に総裁職から解任した。ユヌス氏は、これを違法だとして提訴したが、最高裁は申し立てを退けた。これを受けて、ユヌス氏は、今年5月にグラミン銀行を辞職した。

オルタナの取材に対して、ユヌス氏は、「貧しい借り手によって支えられているグラミン銀行は、独立した金融機関として政府の介入を受けてはならない。辞職をめぐっては、政府に掛け合ったが、政府は機能しなかった。今後は、世界でソーシャル・ビジネスを広めることに力を注いでいきたい」と話した。(オルタナ編集部=吉田広子)

ユヌス氏の考える「ソーシャル・ビジネスの7原則」

1.グラミン・ソーシャル・ビジネスの目的は、利益の最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧 困、教育、健康、技術、環境といった問題を解決することです。

2.財務的、経済的な持続可能性を実現します。

3.投資家は、投資額を回収します。しかし、それを上回る配当は還元されません。

4.投資の元本の回収以降に生じた利益は、グラミン・ソーシャル・ビジネスの普及とよりよい 実施のために使われます。

5.環境へ配慮します。

6.雇用者は良い労働条件で給料を得ることができます。

7.楽しみながら。

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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