地域社会との対話を―子どもの権利とビジネス(8)

世界的なCSRの動向のなかで主流化してきた人権への取り組みだが、子どもの権利と企業の責任を明確につなげる枠組みとして、「子どもの権利とビジネス原則」(CRBP)が2012年3月に発表された。シリーズ「ビジネスと子どもの人権」では、「CRBPの10の原則」を分かりやすく説明していく。第8回は原則7を扱い、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアドボカシー・マネージャーである堀江由美子氏に執筆してもらった。

「ビジネスと人権」に関する国連事務総長特別代表のジョン・ラギー氏が2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」 を発表し、国連人権理事会で承認されて以降、国内でも企業の人権や環境・社会配慮への意識は向上し、大手企業を中心に人権デューディリジェンスの取り組みが進んでいる。

企業には子どもの声を聞き入れていくことが求められる
企業には子どもの声を聞き入れていくことが求められる

各社や業界内での対応に加え、今年5月のG7伊勢志摩サミット前には、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワークから日本政府に対して、2015年のドイツでのG7サミットの「責任あるサプライチェーン」へのコミットメントを踏まえ、ビジネスと人権に関する国別行動計画の策定を求める提言が出された。

市民社会のみならず、ビジネス側からもこうした動きが出ているのは大変望ましいことだ。

こうした望ましい気運の一方で、企業による人権侵害の発生は、国内外で依然として後を絶たない。

中でも、日本企業が人権を侵害したとして抗議行動を受けたり、指摘を受けたりすることが頻繁に見られるのが、開発途上国や新興国の環境破壊や土地収用に関わるケースである。

残念なことに、ODA事業の一環としての官民連携プロジェクトにおいてもこうしたケースは多く見られる。

「子どもの権利とビジネス原則」の原則7は、「環境との関係および土地の取得・利用において、子どもの権利を尊重し、推進する」というものである。

企業が、自社およびサプライヤーの事業活動において環境汚染を最小化し、近隣の住民が不可欠とする空気、土地、水への負の影響を最小限に抑えること、また地域住民への適切な相談および補償なしで土地を搾取しないことを掲げている。

大規模なインフラ建設や農場開発、森林伐採や鉱物採掘などの事業のために企業が土地を利用・取得しようとする際に、その土地の環境や人々の暮らしに何らかのインパクトがもたらされるのは必至である。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #ビジネスと人権

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