サステナビリティ人材の育成と経営教育

■企業トップに求められるリーダーシップとは

続いて、フロアからの質問も交えてパネル・ディスカッションが行われました。
「SDGsを経営戦略に統合していくために企業経営者に求められるリーダーシップとは?」という質問については、長谷川氏より「企業経営者によるトップ・マネジメントが必要であることは広く合意を得ており経団連の企業行動憲章にも謳われている。具体的に実行していくために、経団連ではWBCSD(World Business Council for Sustainable Development)や国連グローバルコンパクトによって提供されたSDGsコンパスを活用して企業経営者をサポートしている」と説明されました。経団連では、サステナビリティやSDGsの認知度をさらに高めていくために、東京・大阪でシンポジウムを開催しているということです。

また、経団連によるこうした取り組み以外にも、ESG投資が企業トップと投資家とのIR対話を促進することに寄与しているとの指摘もなされました。今後は、本社だけでなくグループ企業やサプライチェーンにもSDGsへの取り組みを伝え広げていくことが必要であること、最近は大学生など若い層によるサステナビリティへの関心が高く、彼らが企業内での意識向上に資することが期待されるという指摘もなされました。

「慶應義塾大学大学院経営管理研究科のVisionary Projectのようなプロジェクトは、企業の経営ミッションに影響を及ぼしうるか?」という質問については、岡田教授より「日本企業は外部からのプレッシャーに敏感であり、何かしなければならないという今の状況において、企業トップが本心から動くように彼らの行動を変えていくように働きかけることが重要である」との指摘がなされました。そして「学生自らの気づき・問題意識を引き出すPullストラテジーやバックキャスティングは良いと思われる。

一方で達成するには長い時間が必要。途上国では非常に優秀な人々がいるが、賄賂が多いことが問題である」とのコメントについて「途上国のみならず先進国でも賄賂、コンプライアンス違反はある。社会の共通課題をどうシェアできるかが大切である。現実を知り理解するために、企業トップも現場を見て、感じて、同じ人間として真剣に考える必要があると思われる。」といった意見がなされるなど、活発なディスカッションがなされました。

◆齊藤 紀子(企業と社会フォーラム(JFBS)事務局長)
原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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