持続可能な社会を実現するのは消費者――下田屋毅の欧州CSR最前線(3)

私が住む英国はキリスト教国なので、12月25日は日本の元日のような祝日ムードに包まれ、スーパーマーケットや商店はほとんど営業しない。鉄道・地下鉄・バスなどの交通機関まですべて止まるのだから驚きだ。

しかし年末年始はスーパーマーケットも通常通り開店し、人で賑わう。そんな英国のスーパーマーケットで目を引くものがある。「FSC」や「MSC」など、持続可能性を考慮した認証ラベルがついた商品だ。

FSCとは、Forest Stewardship Council:森林管理協議会(本部ドイツ・ボン)のこと。環境と地域社会に配慮して、持続可能な管理をしている森林から産出された木材や紙製品にのみこのFSC認証マークを付けることが許される。

英国のスーパーマーケットで扱われているトイレットペーパーやキッチンペーパー、ティッシュペーパーなどはFSC認証品が当たり前で、それ以外を探すのが難しいくらいに定着している。

MSCとは、Marine Stewardship Council:海洋管理協議会(本部ロンドン)のことで、持続可能な漁業を行う漁業者を認証する制度の運営機関だ。認証を取得した漁業者によって得られた水産物にのみ、このMSC認証ラベル「海のエコラベル」を付けることが許される。

英国のスーパーマーケット、セインズベリーや、ウエイトローズでは、販売する水産物(鱈、鯖、鮭等)の半数以上は、MSC認証を受けたものを販売、ツナやイワシ等の缶詰もMSC認証品を多く取り扱っている。

また、イギリスの代表的食べ物であるフィッシュ&チップスなど加工された魚にもMSC認証品を使用し、人々が認識しやすいようになっている。

日本においても、このようなFSC/MSCなどの認証品の取り扱いが、イオンなど大手スーパーマーケットで少しずつ増えてきているという。先進国ではモノが溢れ、様々なものを買い揃えることができる状況だが、それら商品が果たして持続可能な形で生産・漁獲されたものか、いま一度、問う必要がある。

企業が持続可能な生産・商品の取り扱いをすることは非常に重要なことだが、人々の消費が持続可能な企業や農林水産業、ひいては持続可能な社会そのものを下支えしていることが、日本でももっと知られても良い。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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