ポーラ、高知県産ゆずの未利用部分をボディソープに

記事のポイント


  1. ポーラが高知産ゆずの未利用部分を使ったボディソープを発売する
  2. 同社は今後も、地域の未利用産品を利用したアップサイクルを広げたい考え
  3. 資源循環の促進に加え、第一次産業の課題を解決し地域活性化にもつなげる

ポーラが高知産ゆずの未利用部分を使ったボディソープを12月1日に発売する。これまで価値がないとして、捨てられていた未利用資源を、有効活用するアップサイクルシリーズ「From Loss To Beauty(フロムロストゥービューティー)」の一環だ。取り組みを通じてポーラは、資源循環の促進に加え、第一次産業の抱える課題を軽減し、地域の活性化にもつなげていく。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

ポーラは、ゆずの白い袋の部分「さのう」(写真中央)を使った
ボディソープ(右)を発売する

新たに発売予定のボディソープ「フロムロストゥービューティー ボディシャワーシロップ」は、高知県産ゆずの「さのう」と呼ばれる白い袋の部分を使う。

ゆずの玉や果汁、皮や種などはこれまで、食品や入浴剤、化粧品などさまざまな分野で活用されてきた。しかし、ゆずの約3割を占める「さのう」を活用する例はなく、これまで、その大半が廃棄されていた。

ポーラの及川美紀社長は、地域に眠る未利用の資源を、「これまで気づいていなかった宝の山」と呼ぶ。同社は、得意技のサイエンスを通じて、廃棄されていた資源の中から新しい価値を見出し、資源循環と地域活性化を推し進める。

■アップサイクル第1弾は、生産者の倍増につながる

すでに「フロムロストゥービューティー」の第1弾として発売されているのは、島根県のオリジナルぶどう「神紅」の未利用資源を使ったハンド美容液だ。

2023年1月に発売後、1週間で完売し、同年内に行った再販でも完売となるなど、好評を博した結果、島根県内の「神紅」の生産者数が倍増した。未利用資源の提供者が増えたことで、当初限定販売だった同商品の定番商品化が2024年9月に決まっている。

■第2弾はゆずの未利用資源で

(写真左から)ポーラ 重住久美子開発リーダー、高知県産業振興推進部産業イノベーション課 久保英子課長、ポーラ 及川美紀社長、東京工科大学応用生物学部応用生物学科松井 毅教授、ファーメンステーション酒井里奈代表取締役

12月発売のアップサイクル新商品は、2020年度に高知県が実施した事業において、未利用資源を再生循環させる研究開発型スタートアップのファーメンステーションとJA高知県とのコラボレーションで、ゆずの「さのう」からエタノールの抽出に成功したことがきっかけだ。

「ゆずのさのうのエキス」については、東京工科大学の松井毅教授が検証・分析を進め、角層のバリア機能と柔軟性を高めることが示唆されたとの結果を報告する。

ゆずは、高知県が日本一の生産量を誇る、同県の重要な産業の一つだ。近年では、フランスなど欧州でもスイーツ素材として定着し、2022年以降、高知県産食品の輸出品目のトップとなり輸出額も年々伸びている。

高知県では、1年間のゆずの収穫量約1万トンに対し、3600トンの「さのう」が排出されている。

「さのう」の廃棄にはコストだけでなく人手もかかる。

「果汁を絞った後の残渣(ざんさ)は、一部のJAでは土壌改良剤にもするが、人手不足やコストがかかるため、結果的にその大半を廃棄物として処理していた」と高知県産業振興推進部産業イノベーション課の久保英子課長は説明する。

■地域に眠る宝の価値を見出せば地域経済の活性化にも

ポーラの重住久美子プロダクトリーダーは、トラックにうずたかく積み上げられた「さのう」から、「ゆずの香りの中で美しさの可能性に満ち溢れていると感じた」と振り返る。

久保課長は、今回のポーラの取り組みについて、「これまで活用できるとまったく思っていなかった部分に新たな価値があることに気づいた。今後、『さのう』が新たな商品に活用されていくことで、地域の生産者の生活や経済にも良い影響が出るだろう」と期待を込める。

ポーラの挑戦はまだまだ続く。

重住プロダクトリーダーは、「日本中の地域に眠る宝を日々、探し続けている」と明かす。

「続けていくことに意義のあるブランドなので、第3弾も考えている」(重住プロダクトリーダー)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

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