日光市で地元企業が協働、地域密着で商品開発[長浜 洋二]

<スマイル日光プロジェクト参加企業と寄付つき商品企画一覧(2015年2月現在)>

・株式会社成文社 <名刺の売上の5%>
・池田種苗店 <種小袋の売上の約3%>
・池田農園 <苺の売上の3%>
・有限会社大津屋(べんとう屋ごち) <しもつかれ汁1杯につき10円>
・片山酒造株式会社 <「大吟醸ほほえみ」1本につき100円>
・有限会社サカモト(珈琲豆とうつわ大和屋) <日光大和屋珈琲(ドリップパック)1個につき3円>
・有限会社ひしや呉服店 <絹洗顔ミトン1個につき10円>
・株式会社渡邊佐平商店 <「純米酒 尊徳」1本につき100円>
・株式会社鬼怒川タクシー <子育て/ユニバーサルデザインタクシーのご利用1回につき50円>
・株式会社三興社彫刻店 <「キャラクター入り朱肉・ネームペン」の売上の約3%>
・沼尾油店今市インターSS <洗車料金の3%>
・株式会社けっこう漬本舗 <「日光けっこう水」500・1本につき5円など>
・有限会社皇漢堂薬局 <煎じ薬のレトルトパック手数料の3%>
・有限会社梅屋商店 <こだわりの生そば『匠シリーズ』1パックにつき20円>
・有限会社エネックスつるや <灯油20・につき10円>

このプロジェクトの特徴、そして成功要因の1つ目は、大企業が日本全国を対象に大規模な広告展開をしながらコーズマーケティングを仕掛けるのではなく、あくまでも「地域密着」である点です。上述のとおり、参加企業にとっては、事業を行っている地元に愛されなければ意味がありません。プロジェクト全体の調整役を務める成文社の小栗卓常務は、当初から「地元企業は地域がなければ成り立たない。恩返しするつもりで取り組んでいきたい」と言われていました。

2つ目として、1社だけで実施するのではなく、複数の企業が協業している点です。特に地方や中小企業においては、社会的なインパクトを創出するためにも、複数の企業で取り組むほうが効果は高いと言えます。「スマイル日光プロジェクト」に参加した企業は、共通デザインの幟やポスター、チラシの使用や、共同でイベントに出展するなど、プロジェクト露出を効果的に行ってきました。結果として、下野新聞やCRT栃木放送などの地域メディアにも何度か取り上げられることとなりました。

また、複数社で取り組むことは、売上の拡大及び寄付目標金額の達成に向け、参加企業同士の競争心を育んだり、ノウハウを学び合ったりするなどのメリットをもたらします。もともと地元の学生時代の友人や、先輩後輩の間柄であることもあり、議論を重ねる中で全員の合意形成をしながらプロジェクトを進めることができました。

プロジェクト全体の寄付目標金額と各社ごとの目標金額の2つを設定し、小まめに進捗状況を共有し合うことで、参加企業全員の状況がガラス張りとなり、目標必達の意識が芽生え、販売面での工夫にも繋がっていきました。

最後の点が、プロジェクト全体を先導する旗振り役が必要だということです。前出の成文社の小栗卓常務がプロジェクトの発起人の1人でもありますが、当初から献身的にプロジェクトの企画や調整に携わってきました。自社が印刷会社ということもあり、無償でプロジェクトのロゴやチラシを製作したり、参加企業のコーディネートをしたりと、当初から率先してプロジェクトを主導しています。その姿に他の参加企業も影響を受け、プロジェクトが着実に拡大していったように思います。

今後は、プロジェクトの参加企業をさらに拡大していくとともに、寄付先や寄付方法の拡充、寄付以外の手段による地域貢献などについて模索していくことになります。

CSRへの取り組みは継続しなければ意味がありません。そのためにも、地域コミュニティと地元企業との間に無理のない関係性を維持し、お互いが支え合うような仕組みの構築が不可欠です。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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