現代奴隷労働と企業のリスク――下田屋毅の欧州CSR最前線

この定義の下で現代の奴隷労働として、劣悪な労働環境下の労働者がいると見なされていることを事実として捉えなければならない。これは定義が適切かどうかという議論よりも、自社・グループの中でその状況に当てはまる労働者がいないか、また、特に国外におけるサプライチェーン上において、現代奴隷労働のリスクが高い国などがないか、その状況を確認しているかが問われていると考えることが必要だ。

また、企業が関わる人権侵害の対応のために「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が、2011年6月に国連人権「理事会の承認を得て発行、指導原則は「国家の人権の保護企業の人権の尊重」「救済」に関するフレームワークで、自主的なアプローチと規制の双方をうまく活用することを推奨している。

世界の企業は現在この指導原則に則ってそれぞれの人権プログラムを作成し機能させようとしている。人権への取り組みが遅れている企業は、それをリスクとして考え、今後の対応を検討する必要がある。国際的な枠組みの中で、企業は人権に関する行動をとらなければならない時期にきている。

この指導原則について議論し、ステークホルダー間のエンゲージメントの強化やトレンド、課題、模範事例などを見つけることを目的としている国連の会議「第3回ビジネスと人権フォーラム」が、2014年12月1日~3日までジュネーブにて開催される。

私もこの会議に今年も参加する予定としているので、国家企業の取り組みや、NGOや市民団体、先住民からの声など現在の企業に関わる人権の状況を確認し、また皆さんにお伝えできればと考えている。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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