大阪万博が開催されたこの年、環境問題、公害や交通戦争など、高度成長期のの負の側面はますます深刻な問題になっていました。このCMは経済成長偏重の危うさ、人間性の復活とともに、「経済」「環境」「社会」の共生という、いまで言う「トリプルボトムライン」を訴えていたのではないでしょうか。
米ゼロックスの創業者ジョセフ・ウィルソンの理念「我々のビジネスの目標は、より良いコミュニケーションを通じて、人間社会のより良い理解をもたらすことである」も、トリプルボトムラインに通じるものがあります。
「モーレツからビューティフルへ」から3年後、今度は第一次石油ショックが起こり、エネルギー問題や狂乱物価が日本を襲います。この年にはE・F・シューマッハーが「スモールイズビューティフル」(人間中心の経済学)を発表し、野放図な拡大志向の先には経済的、社会的な破たんが起きかねないと警鐘を鳴らしました。
それから40年余りたち、多くの企業経営者の考えにも環境や社会との共生が反映されるようになりました。しかし全体としてはまだ十分ではないように思えます。CSRを「企業の社会的責任」だけではなく、「企業の社会対応力」と位置づけ、さまざまなステークホルダーの声を聞き、社会に対応していく力が問われています。