記事のポイント
- 日本総研は、気候変動が食料供給と企業経営に及ぼす影響を分析した
- 猛暑や豪雨で、従来の食料の生産・加工・流通の前提が崩れつつあると警告する
- その上で、企業は自社の重要原料を見極め、適応策に着手するよう提言する
日本総合研究所(東京・品川)は2026年10月20日、気候変動が食料供給と企業経営に及ぼす影響を分析し、その結果に基づいた企業向け提言を公表した。2040年には産業革命前から平均気温が「プラス2℃」上昇にもなりうる中で、これまでの食料の生産・加工・流通の前提はすでに崩れつつあると警鐘を鳴らす。そのうえで、川上領域への積極関与や、農畜水産物の量や質の変動を事業の中で吸収する設計など、取るべき適応策を提唱する。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

日本総研は10月20日、企業に向けた提言を示したホワイトペーパー「『プラス2℃』がもたらす2040年『食クライシス』」を公表し、同日、都内でメディア向け説明会を開いた。産業革命前に比べて平均気温が2℃上昇する2040年代においては、これまでの食料を「作る・買う・届ける」前提が同時に崩れ、食の安定供給が根底から脅かされるとし、企業に適応策に着手するよう促す。
■世界同時不作が、調達先の変更を難しくする
昨今の記録的な暑さは、1年限りでは終わるものではなく、また世界各地も同様に温暖化の影響を受けていることから、「別の産地からの調達」といった「いろいろな逃げ道がふさがれている」と同社創発戦略センターの三輪泰史チーフスペシャリストは警鐘を鳴らす。
気候変動の影響は、コメの生産量低下と白く濁る「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」や胴割れの増加のほか、トマトの着色不良やレタスの結球不良、ぶどうの着色不良や酸度の低下、乳牛の乳量減少、採卵鶏の産卵率低下、サンマ・秋サケの不漁など幅広い。富山県氷見市では昨冬、海水温の上昇で記録的な不漁となり、恒例の「ひみ寒ブリ宣言」が出せなかった。また明治時代に岐阜で創業した老舗酒造メーカーが北海道に移転するなど、発酵食品にも影響が及んでいる。
カロリーベースでの食料自給率が4割弱と、先進国の中でも低い日本は、気候変動による世界同時不作の影響も大きい。2026年秋以降、観測史上最大級のエルニーニョが発生する可能性が高く、農産物にさらなる悪影響を与えることが危惧される。
日本の購買力の停滞と円安が重なり、新興国との調達競争で買い負ける場面も頻発し、「金を払えば買える」国ではなくなっているほか、渇水で船の運航に制限がかかるなど、気候変動は河川・運河・港湾・コールドチェーンにも悪影響を及ぼしている。国内では、気温上昇で常温で輸送していたジャガイモの品質が劣化した事例もあり、三輪氏は「夏季に15~25℃での常温保存が難しくなり、2040年には冷蔵庫の中に『常温庫』という一つの部屋ができる可能性」も示唆した。
■合理的なSCMが、気候変動で「弱点」に変わる
■先行企業は生産・加工拠点を北海道に移し始めた
■調達環境の激変を、事業の中で吸収する企業も

