記事のポイント
- モンゴル東部のヌムルグ自然保護区で、大規模な草原火災が発生した
- 現地日系企業の日本人幹部らが保護区に車で進入したことが出火原因との報道も
- 当該日系企業は、モンゴル通信大手のモビコム社で、KDDIの連結子会社だ
モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡のヌムルグ自然保護区で、10月8日以降、大規模な草原火災が発生し、東京都の面積の約2.4倍にあたる土地が焼失した。現地メディアは、KDDIの連結子会社でモンゴル通信大手モビコム社(本社:ウランバートル)の日本人幹部らが、同自然保護区に車で立ち入り、走行中に枯れ草に引火したことが原因と報じる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(エグーア・ニュースが共有した市民による撮影動画より)
モンゴルメディア「Eguur News(エグーア・ニュース)」によると、最初の通報は10月8日11時55分(日本時間午後0時55分)、出火地点は、立ち入りが厳しく制限される自然保護区の中心部だ。10月16日朝には完全に鎮火したものの、この大規模火災により、約52.9万ヘクタールの土地が焼失したと同国・環境気候変動省が発表した。この規模は、東京都の面積の2.4倍に相当する。
また、火災の影響を受けた土地のうち、46.9万ヘクタールが同自然保護区の域内にあり、同自然保護区の総面積の79.8%が焼失したことになる。
ヌムルグ厳重保護区は、モンゴル東部で最もよく保存された自然生態系の一つであり、絶滅危惧種や希少種を含む多種多様な野生生物の生息地となっている。
同省は、環境被害は焼失面積だけでなく、土壌、水、大気、植生、野生生物、希少種や絶滅危惧種の植物の生息地、生態系機能への影響、そして長期的な生態学的影響も包括的に評価するべきだとして、現在、作業部会による現地調査を実施している。
■「出火原因は日系企業」
この大火災を引き起こした原因と報じられているのがモンゴル国内の通信大手モビコム社だ。モビコム社はKDDIが98.8%を出資する連結子会社で、KDDIの有価証券報告書によると、これまでのKDDIからの出資額は約61.3億モンゴル・トゥグルグ(約2.7億円)、2026年3月31日時点でKDDIの社員2人が同社役員に就いている。なお2026年4月1日に、KDDIから同社に出向していた越智康博氏がモビコム社のCEOに就任した。
モンゴルのゴン・テムルン法務・内務大臣は、関係者全員に責任を負わせ、損害賠償を命じると述べている。警察による捜査の最終結果が公表されていない。
モンゴルのテレビ局NTVは、モビコム社の越智CEOが同国国民に謝罪し、同社として責任を回避することなく捜査結果と関連法規に基づき火災による損害を賠償するための措置を講じると述べた映像を報じている。
モンゴルメディアによると、同国のウ・オトゴンバヤル国会議員とモビコム社の役員ら一行は2026年10月7日、ドルノド県ハルハゴル郡のスムベール検問所を訪れ、同検問所へ引き込んだ光ファイバー回線の開通式に参加した。これにより、ハルハゴル国境警備隊の全小隊が4Gネットワークに接続された。
その翌日、国境警備隊の司令官の許可の下、モビコム社の役員らを含む5台の車両が自然保護区に立ち入った。モンゴルに生息する絶滅危惧種である淡水魚・トゥルを釣るためとの報道もある。同メディアは情報筋の話として、5台の車両に、モビコム社の経営幹部3人、地元住民2人、モンゴルの元国会議員の実弟などが乗車していたと報じた。そのうち、日本人幹部が乗っていた日産「パトロール」(Y62型)が走行中、車両底面に大量の草が絡みついたことで発火した。
これを受け、モンゴルや中国国内のネット上では当初、「モンゴルのウ・オトゴンバヤル国会議員が同行させたモビコム社の役員らが、保護区内で違法な狩猟を行って火災を引き起こした」との情報が広がった。しかし同メディアは、同国会議員については、開通式当日に現地を発ち、火災が発生した8日にはウランバートルに到着していた、と補足する。
火災に見舞われたヌムルグ保護区は、沼地が多く、峠や丘陵地帯もあるため車両での通行は困難だという。権力者や影響力のある官僚・新興財閥らが、ヒグマ、アムールヘラジカ、カワウソ、ノロジカ、イノシシなどの狩猟や娯楽のために、ヘリコプターで赴く場所ことが多く、一般市民が立ち入ることはほぼできないエリアだ。
火災の原因となったモビコム社の役員らは、ハルハゴル郡警察署に呼び出され聴取を受けたが、役員らはウランバートルから弁護士を呼び寄せ、自分たちはウランバートルに戻ったとも報じた。
モンゴル唯一の自然保護区が焼け野原となり、極めて希少な野生動物たちが火災から逃れるために中国の国境へと逃げ込んだ。火災発生日から、中国側の国境警備隊は準備体制を整えて消火活動にあたるとともに、火災から逃れてきた動物たちを自国側へ迎え入れたという。
中国・環球時報によると、消火にあたっては、モンゴル側で3省から606人の消防隊員が消火活動にあたった。また火災が中国国境に迫る形で延焼してきたため、中国側でもモンゴルとの国境沿いに3400人超のレスキュー隊を動員したという。火災は10月16日に鎮火した。

