記事のポイント
- ブラジル大統領選挙の決選投票で、現職のルラ大統領が勝利した
- ボルソナロ前大統領の長男フラヴィオ・ボルソナロ候補を破った
- 環境政策の行方を、ブラジルの政治・外交・環境政策に詳しい専門家に聞いた
ブラジル大統領選挙の決選投票が2026年10月25日(現地時間)に行われ、現職のルラ大統領が再選を果たした。第1回投票で首位となったボルソナロ前大統領の長男・フラヴィオ・ボルソナロ候補(右派)との僅差の接戦を制した。大統領職は左派が維持したが、右派・保守派の影響力は強く、今後の政権運営には厳しい制約が残る。ブラジルの政治・外交・環境政策に詳しい慶應義塾大学法学部の舛方周一郎准教授に話を聞いた。(聞き手=オルタナ輪番編集長・北村佳代子)


舛方周一郎(ますかた・しゅういちろう)慶應義塾大学法学部准教授
専門はブラジル政治外交、国際政治経済、環境政治。ブラジルを中心に、アマゾンの森林保全、気候変動政策、エネルギー転換、グローバルサウスの国際協力を研究している。近年は、ブラジル北東部における再生可能エネルギー開発や日本・ブラジル間の気候・エネルギー協力に注目し、現地調査を通じて、国内政治、外交、地域社会の相互作用から環境・エネルギー政策を分析している。
■政治的な分断・分極化は深まる
――ブラジル大統領選で、現職ルラが再選されました。選挙結果をどう受け止めていますか。
2022年の大統領選挙では、候補者同士の対立が激化し、支援者同士の衝突や殺害事件にまで発展しました。私が2026年8~9月に現地を視察した際、その教訓から対立を避けるため、現地で話を聞いた人々の間では、「家族やコミュニティでは政治の話題を避けたい」という声が多く聞かれました。
一方、決選投票に向かうにつれてSNS上では非難の応酬が目立つようになりました。国内の政治的分断と分極化が依然として改善されていない現実が浮き彫りになりました。
それでも、世界的に右傾化の流れが強まる中、ブラジルが瀬戸際で左派政権を踏みとどまらせた意味は非常に大きいと言えます。
■ルラ続投で環境政策は前進するのか
――ルラ政権は2025年、COP30(気候変動枠組み条約第30回締約国会議)の議長国を務めるなど、気候変動政策を積極的に進めてきました。今回の勝利で環境政策はさらに前進するでしょうか。
単純に、以前のように環境政策が拡大していくとは見づらいのが実情です。大統領選こそ紙一重でルラが勝利しましたが、連邦議会選挙や州政治では右派・保守派が強い影響力を持っており、ブラジル政治全体の右傾化の潮流は変わっていません。
特に懸念されるのが、議会で勢力を拡大した超党派の農牧議連の存在です。彼らの強い影響力により、農業分野の拡大を目指すためにアマゾンでの開発の許認可が下りやすくなる環境が整いつつあります。
先住民の土地についても、土地画定や伐採、農牧業の拡大による圧力が続いています。先住民の権利を保障しながら、こうした開発圧力をどう抑えるかが課題です。
ただ、この20年間のブラジル環境政策を見てきた立場から言えば、「環境」が政策の主題の一つとして扱われるようになってきたこと自体は大きな前進です。環境保護の正当性を理解する若い世代も着実に増えてきてはいます。
■それでも「アマゾンの開発は進みかねない」
■コロンビアの右傾化で環境外交の協力相手を失う
■日本企業が取るべき中長期アプローチ

