記事のポイント
- インドネシアの森林火災が東南アジアに広がり、深刻さを増している
- シンガポール政府は20社に対し、法的責任を追及する構えを見せた
- 日本企業の主要調達先も、そのリストに含まれている
インドネシアの森林火災に起因した煙害がシンガポール、マレーシア、フィリピンなどにも広がり、東南アジア各国で深刻化している。シンガポールの国家環境庁(NEA)は2026年10月、インドネシアの農園企業10社に加え、シンガポール拠点のアグリビジネス大手を含む10社の計20社に、越境煙害汚染法(THPA)に基づく法的通知を出した。食品・パーム油・製紙など、日本企業の主要調達先も含まれる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(c) Center for Research on Energy and Clean Air
■インドネシア国内では9月だけで3500人超が犠牲に
インドネシアの森林火災に起因したヘイズ(煙害)が、甚大な人命・健康被害を引き起こしている。
フィンランドの独立系研究機関のエネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)は2026年10月29日、インドネシア国内で、森林火災に伴う大気汚染を主因とした死者数が、2026年9月単月だけで推定3560人に達したとの調査結果を明らかにした。
煙害の被害は、火災の発生地に近い同国カリマンタン島やスマトラ島が最も深刻だ。9月のPM2.5濃度は、インドネシア全国平均で36µg/m³(マイクログラム毎立米)と、WHO(世界保健機関)の定める年間基準値(5µg/m³)の7倍超に達したが、スマトラ島ではその10倍、カリマンタン島では24倍超に至った。
5段階の大気汚染レベルのうち、「不健康」から「危険」の深刻度の上位3レベルにさらされた市民の数は、9月に月間として過去最高の5800万人に達し、8月のピーク時から40%増加した。カリマンタン島だけで、「危険」な大気にさらされた市民は、8月の最悪期の280万人から640万人へとほぼ3倍に増えた。
煙害が深刻な同国の7つの州では、9月に推定33万3470件の急性呼吸器疾患を引き起こし、これら症例の約4分の1が、0~5歳の子どもだったという。
インドネシア環境林業省(KLHK)などの発表によると、2026年の累計焼失面積は6万ヘクタールを超えた。この規模は、東京23区の面積に相当する。消火が困難な泥炭地での火災がもたらす有毒な煙は近隣国へも流入し、シンガポールでは大気質指標(PSI)が11日連続で「不健康」レベルを記録したほか、マレーシアでも学校の臨時休校や航空便の欠航など、膨大な経済・社会打撃が広がっている。
国際環境NGOのグリーンピースは、2026年10月1日に公開した報告書「グローバルコモディティによって清浄な大気が犠牲にされるとき」の中で、衛星データの解析から火災発生のホットスポットの約半数が、企業の事業地やそのサプライチェーンである農園に集中していると分析した。そして、この煙害は、コモディティへの需要と企業の土地管理の怠慢が生んだ人災だと厳しく告発した。
■シンガポール政府は「越境煙害法」を盾に強硬姿勢
こうした事態を受け、シンガポール政府は国家環境庁(NEA)が「越境煙害汚染法(Transboundary Haze Pollution Act: THPA)」に基づく強硬姿勢に転じた。同法律は、国外で発生した煙害であっても自国(シンガポール)に被害を及ぼした場合、関与した企業や管理責任を果たさなかった主体に対して罰金や改善命令等の法的責任を追及できる「域外適用」を定めたものだ。
NEAは10月16日、下記のインドネシア企業10社に対して、法的通知を発行した。
■調査対象となったインドネシア企業10社リスト
■シンガポール拠点の10社にも法的通知
■「責任回避は許さない」とシンガポール高官
■「認証取得」だけでは防げない

