『地球に住めなくなる日』著者インタビュー(上)

「地球の平均気温2℃上昇で死者が1億5000万人増加する」など「気候崩壊」に伴う衝撃的な事実をまとめた『地球に住めなくなる日「気候崩壊の避けられない真実」』(NHK出版)が米国や欧州でベストセラーになった。著者であるデイビッド・ウォレス・ウェルズ氏に気候崩壊や新型コロナの影響などをオンラインで取材した。(聞き手:オルタナ編集長・森 摂、編集協力:野口知世)

取材はオンラインで実施した

■「バイデン大統領候補はヒラリー氏より環境先進的」

「地球の平均気温4℃上昇で北極圏にヤシの木が生える」「2050年までに気候難民が10億人に」――。「地球に住めなくなる日」ではこんなショッキングなファクトがぎっしり詰まっている。

だが、少なくとも日ごろから環境問題に関心が高い人たちにとっては、これらの衝撃的な事実を再認識すると同時に、一種のデジャビュ(既視感)を覚えることもあるだろう。問題は、あまりに多くの人たちが環境問題について無関心であるか、懐疑的であることだ。懐疑派の筆頭は米トランプ大統領だろう。そこで、デイビッド・ウォレス・ウェルズ氏とのインタビューは、トランプ米大統領のことから聞くことにした。

――気候変動を理解していない政治家の筆頭はトランプ米大統領のように思います。あなたの本はまずトランプ大統領が読むべきだと思いませんか。

私は、すでにトランプ大統領や共和党が、気候変動対策に反対する従来の姿勢を緩めているように思います。確かに以前は、気候変動対策は必要だろうが高くつくし、他に投資したほうが賢明だろうと考えていました。しかし、ここ数年の劇的な気候変動を目の当たりにし、もう気候変動を否定できなくなりました。

むしろ、一部の強硬な政治家たちが、この気候変動を自国第一主義的な言葉に置き換え、政治の道具として利用するリスクが出てきました。トランプ大統領やオーストラリアのモリソン首相もその一人です。

日本の安倍晋三首相はより進歩的かもしれませんが、最近の石炭火力発電を後押しする発言は賛成できません。石炭火力発電は、非経済的で世界の流れに逆行しています。世界の3分の2の国は、石炭だけではなく石油やガスも再生可能エネルギーに置き換え始めています。

私の本は、トランプ大統領に限らず全リーダーに読んでもらいたいのですが、おそらくトランプ大統領が読んだとしても、彼の基本的な姿勢や役割は変わらないでしょう。

トランプ大統領が米国の利益を最優先することは、政治でも環境分野でも同じです。トランプは国際政治や貿易を「プラスサム」(皆が得をすること)ではなく、「ゼロサム」(誰かが得をすれば、その分、誰かが損をすること)、「マイナスサム」(皆が損をすること)と捉えますが、気候問題についても同じです。

民主党陣営の多くは、私の本を読んでくれていると思います。最近もバーニー・サンダース氏らと話をしました。ジョー・バイデン大統領候補は環境活動家からすると絶望的なほど後ろ向きですが、その彼もヒラリー・クリントン氏よりずっと環境先進的であり、ヒラリーはオバマ元大統領よりも環境先進的です。

気候変動を巡る政治状況は目まぐるしく変わっています。最も遅れていると思われている人物でさえも、3~4年前に比べるとずっと進歩的です。環境活動家からみれば気候変動対策のスピードが不十分でも、気候変動が議論されるようになったこと自体が、大きな進歩なのです。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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