地球への贈り物:オルタナ論説委員・竹村眞一

【連載】地球の目線2021(1)

クリスマスも近づく季節、コロナ下でもこの時期だけは外出制限が欧州でも緩和されそうだ。クリスマスには3つの謎がある。なぜ冬至から新年の時期なのか?なぜプレゼントを交換するのか?なぜそれをあげる相手が子どもなのか?(オルタナ客員論説委員=竹村 眞一)

竹村眞一・京都芸術大学教授

もともとパレスチナの新興宗教であったキリスト教は、布教のために当時かの地を支配していたローマ帝国で人気を集めていたミトラ教の「太陽信仰」に、キリストの降誕を重ね合わせた。

冬至は「太陽の死と再生」の時。日本でも天照大神を祀る伊勢神宮の参道は、冬至のご来光を拝む方向に設えられ、朝日が五十鈴川にかかる鳥居の正面に昇る。最も大切なものの死と再生を祝う通過儀礼として冬至は必然だった。

だがこの時期は、この世界の生命力が最も減衰する時でもある。後にキリスト教が広がったゲルマン系の北欧など、高緯度地域では太陽がまったく昇らない。闇のなかであの世(死者の世界)と現世のバランスも崩れ、死者に贈り物をしてこの世界の活力を回復する必要がある。プレゼントを贈る相手が子どもなのも、子どもが霊界に近い存在、死者の再生(生まれかわり)だから。

クリスマスは、もともとこうした大きな世界のバランス調整の試みであり、宇宙的な経済活性化の試みだった。プレゼントの交換も、もともとは現世の人々のあいだで閉じてはいない、眼にみえる世界の「外部」への想像力を前提としたものだった。

shinichitakemura

竹村 眞一(京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)

京都芸術大学教授、NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表理事、東京大学大学院・文化人類学博士課程修了。人類学的な視点から環境問題やIT社会を論じつつ、デジタル地球儀「触れる地球」の企画開発など独自の取り組みを進める。著者に『地球の目線』(PHP新書)など

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キーワード: #SDGs

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