学生たちが小泉環境相に厳しい意見をぶつけたが、その背景には、昨年から始まった「エネルギー基本計画(以下エネ基)」の見直しがある。エネ基は日本のエネルギー政策の方針をまとめた計画で、3年ごとに見直しが行われる。このタイミングで、環境省として2050年を担う若者の意見を聞くため意見交換会を実施した。
日本は2014年に閣議決定され第4次エネ基をもとに、2018年7月に第5次エネ基を策定した。第5次エネ基では発電方法の組み合わせとして2030年までに火力が56%、原子力が20~22%、自然エネルギーが22~24%と目標を掲げた。CO2の排出量については、2030年に2013年度比-26.0%を目指す。
国連加盟の180カ国が批准した気候変動に関する国際枠組み「パリ協定(2015年採択)」に関する目標についてもエネ基をもとに決めている。パリ協定とは、世界の平均気温の上昇を「産業革命以前に比べて2度より低く保ち、1.5度に抑える努力をする」という長期的な目標を定めた国際アジェンダで、いま世界で脱炭素の潮流が起きているのはこのパリ協定の効力が大きい。
日本は、エネ基で定めた通り、2015年7月に国連に、「2030年度にCO2の排出を-26.0%(2013年度比)」を目標として提出した。しかし、2018年10月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した「1.5℃特別報告書」では、「各国が提出している2030年までの削減目標を足し合わせても、2100年までに約3度も気温が上昇する」と予測した。
地球の平均気温が3度上昇するとどうなるのか。『地球に住めなくなる日: 「気候崩壊」の避けられない真実』(NHK出版)の著者デイビッド・ウォレス・ウェルズ氏は著書で、「南ヨーロッパでは旱魃が慢性化し、森林火災で焼失する面積が地中海で2倍、アメリカで6倍以上になる」と語る。
さらに4度上昇では、デング熱感染者が、ラテンアメリカだけで800万人になり、地球規模の食料危機が毎年起き、河川の氾濫被害がインドで20倍、バングラデシュで30倍、イギリスで60倍に増え、複数の気象災害が1カ所で同時発生し、損害は世界全体で600兆ドルに達する――と予測している。