服づくりからフェアなトレードを考える

ファッション産業では、2013年4月にバングラデシュで発生した縫製工場(ラナ・プラザ)の崩落事故をきっかけに、衣服の生産背景の透明化を求める声が強まっている。しかし冒頭でも述べたように、複数の国に点在する生産現場で安全性・公正さを保証するためには課題が多い。

また、国外だけでなく、日本国内の縫製工場等においても、外国人実習生の待遇が問題視されている。

いずれにせよ、複雑なサプライチェーンを自社で全て確認することは困難であり、外部の機関や専門家による監査が必要になるが、商品数や工程が多いファッション産業においてそうしたコストは膨大なものとなる。

このコストは本来製品の価格に上乗せされても良いように思うが、市場競争の中で、それを実践するという判断は企業にとって非常にハードルが高い。このジレンマを抜け出すためには、一時的には政府からの支援など、倫理的・環境的配慮を推し進めようとする企業へのバックアップが必要かもしれない。

しかし、コスト競争の中で私たちが削っているものは一体何だろうか。消費者は皆労働者でもあるが、過剰なコストカット競争はまわりまわって自分たちの首を絞めてはいないか。日々の消費のあり方を入り口に、労働のあり方、ひいては社会のあり方について考えることをやめないようにしたい。

<参考>
1,
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/200129seni_genjyou_torikumi.pdf

2,
渡辺龍也(2007)「フェアトレードの形成と展開-国際貿易システムへの挑戦-」『現代法学』第 14 号, 3-72

3,http://fairtrade-forum-japan.org/wp-content/uploads/2019/10/265e39faa78ff62d9fb9ef5661682779.pdf

鎌田安里紗:
衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響を意識する”エシカルファッション”に関する情報発信を積極的に行い、ファッションブランドとのコラボレーションでの製品企画、衣服の生産地を訪ねるスタディ・ツアーの企画などを行っている。暮らしのちいさな実験室Little Life Labを主宰。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。環境省「森里川海プロジェクト」アンバサダー。

arisakamada

鎌田 安里紗(一般社団法人unisteps共同代表)

一般社団法人unisteps共同代表。衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響を意識する”エシカルファッション”に関する情報発信を積極的に行い、ファッションブランドとのコラボレーションでの製品企画、衣服の生産地を訪ねるスタディ・ツアーの企画などを行っている。暮らしのちいさな実験室Little Life Labを主宰。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。環境省「森里川海プロジェクト」アンバサダー。【連載】多様で健康的なファッションの未来を考える

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キーワード: #フェアトレード

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