森発言が示した問題の本質(藻谷 浩介)

問題の本質はニつだ。第一に、およそ公的な会合で物事を決めるべき場において、「みだりに意見を述べる者は歓迎されない」ということを、彼は公言した。日本のあらゆる企業や諸団体に共通の暗黙のルールを、本音で話したのだが、問題はそのルールそのものがダメなものだということにある。

そもそも根回し済のシャンシャン総会自体が、生産性を下げるだけの時間の無駄だ。だがそれ以上に問題なのは、対立する議論の中からその場で相互に学んで弁証法的に物事を決めていくという世界共通のOSを、日本人と日本人の組織は鍛えていないということである。

在学時から暗記力と同調圧力感知能力ばかりを研ぎ澄まし、対立の化合物として成長を産む応答作法を訓練していないので、日本からは世界に通じる人材がなかなか生まれない。首相の、評判の悪い原稿読みも、まったく同じ欠陥の表れである。

問題の本質、第二は、、

motanikosuke

藻谷 浩介(日本総合研究所主席研究員/オルタナ客員論説委員)

山口県生まれの56歳。平成合併前の全3,200市町村、海外114ヶ国を自費で訪問し,地域特性を多面的に把握。地域振興、人口成熟問題、観光振興などに関し研究・著作・講演を行う。2012年より現職。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』 (KADOKAWA)、完本・しなやかな日本列島のつくりかた(新潮社)など。近著に『進化する里山資本主義』(Japan Times)、『世界まちかど地政学 Next』(文藝春秋)。 写真:青木優佳【連載】藻谷浩介の『ファクト』で考えよう

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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