震災10年、東北にもたらされた新しい価値

震災10年で開催されたオンライン・シンポジウムを見た。女川、大槌、福島で放課後のコラボスクールを運営するNPO法人カタリバ(東京)の今村久美代表が「都会から東北に入った若者は得るものが多かったが、現地の人はどうなんだろう。何か得るものがあったのだろうか」と対談で問いかけていた。

これに対し、元岩手県議で、食べ物フリマサービスの株式会社「ポケットマルシェ」CEO、高橋博之さんは「カタリバなど東京から人が来てくれるなんて大変なこと。皆が来なかったら今の東北はない」と言い切った。「最近、秋田の人と話す機会があったが、秋田には誰も来ない。震災は大変なことだが、岩手や宮城、福島は、あれだけの人が来た。うらやましいと言われた」。

高橋さんもネットで生産者とつながる分散型流通を確立した。コロナ禍でも健闘している。

若者が溶け込み強靭さを増したコミュニティは行政や企業、NPOを巻き込み、新たな価値創造に向かっている。

コロナは人の交流が難しくなり都会のコミュニティを蝕んでいるのとは対照的だ。

過疎化、高齢化は日本の地方では依然として深刻だ。東北で生まれた、垣根なしに皆が融和し融合するという新たな価値、様々な活動がこの課題解決に希望を与えてくれるような気がする。 (完)


harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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