ガバナンス・コード再改訂のポイントは

【連載】サステナビリティ経営戦略(5)

現在、金融庁の有識者会議でコーポレートガバナンス・コードの再改訂に向けた検討が進められています。(本コードは2015年に制定、2018年に1回目の改訂)。3月31日の有識者会議では本コードの改訂案が提示されました。今後、パブリックコメントを経て6月に公表される予定です。(遠藤 直見・サステナビリティ経営研究家)

今回の改訂は、東京証券取引所が2022年4月に予定している市場改革(プライム/スタンダード/グロースの3区分に再編)とも関連しています。プライム市場でのガバナンスについては「より高い水準」が求められており、同市場への上場予定企業は改訂後の本コードへの適切な対応が必須となります。

改訂内容は、取締役会の機能発揮、企業の中核人材における多様性の確保、サステナビリティを巡る課題への取組み、グループガバナンスの在り方、監査に対する信頼性の確保など多岐にわたりますが、最も注目すべきは「サステナビリティを巡る課題への取組み」だと思います。

例えば、「サステナビリティを巡る課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識」(補充原則2-3①(追加・修正))、「取締役会は、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定」(補充原則4-2②(新設))など本コードにおけるサステナビリティの重要性が確実に高まっています。

この背景には、ESG投資の世界的な興隆、欧州グリーンディール等各国・地域のサステナビリティ関連政策(菅政権の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」含む)の策定など、特にこの数年で一気に加速したサステナビリティを巡るグローバルな潮流があることは間違いないと思います。

特筆されるべきは、気候変動に係る情報開示でしょう。

補充原則3-1③(新設)で「気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」と明記されました。

対象がプライム市場上場会社とは言え、前回改訂時にはESG情報に関してここまで具体的な開示が求められることは考えられなかったと思います。

日本企業は、持続的な成長と中長期の企業価値向上に向けて、新たなコーポレートガバナンス・コードを礎とするサステナビリティ経営への戦略的かつ実効的な取り組みが期待されます。

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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