原田勝広の視点焦点:SDGインパクト来年上期導入

■投資マネー促進で競争激化

国連開発計画(UNDP)がSDGsの目標(17ゴール)達成にインパクト(効果)があるかどうかを認証する基準となる「SDGインパクト」策定作業が本格化してきました。準備はやや遅れ気味で、来年上半期の導入となりそうです。SDGの名を冠した強力ブランドの認証制度採用により、これまで「社会課題の解決」が前面に出ていたSDGsは、医療、教育や農業、住宅など途上国の社会開発プロジェクト案件への投資や事業を通して世界規模の巨大なマネーの流れを促進することになりそうです。企業の国際競争に拍車がかかる可能性もあり、出遅れ気味の日本企業も対応を迫られそうです。(オルタナ論説委員=原田勝広)

2015年9月に国連で採択されたSDGs

SDGインパクトの認証を与える対象は、プライベ-ト・エクイティ・ファンド(Private Equity Funds=PEファンド)、債券(Bonds)、 企業(Enterprises)、の3つ。SDGインパクト基準は認証を受けるための社内の内部実践基準とされています。

■PEと債券向け基準は発表済み

PEファンドは2020年10月には基準がまとまり、既にモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなど30以上の金融機関が参加し、ブラジルやインド、インドネシアなど11カ国でテストを実施、近くパイロット運用が始まる見通しです。

ことし3月には債券向けの基準が発表され、企業向けも既に基準草案が公表されており、基準そのものも今月末に発表の予定となっています。

認証を与えるかどうかの判断基準となるスタンダードはどういうものでしょうか。まず、ステークホルダーとの連携やマテリアリティなどを設計要素に組み込みながら、以下を基本理念としています。

「持続可能な開発への積極的な貢献とSDGs達成」
「人権尊重とグローバルコンパクトなど責任あるビジネス慣行が不可欠」
「効果的なインパクト管理と決定により実現」

これに基づいて、SDGs達成に効果があるかどうかの評価は、プロセスにおいて関連性を持たせながら統合し包括的に考えていく必要があるとの考えから、4つの側面でスタンダード(標準)を設けています。つまり、戦略、管理アプローチ、透明性、ガバナンスです。PEファンドや債券、企業がこうしたスタンダードに合致しているかどうかを見て認証を与える仕組みです。

債券向け基準については4月、中国銀行間債券市場で新開発銀行(NDB)のSDG債券発行で既に市場で試験的に実施されているそうです。

UNDPは「この基準は、持続可能な開発とSDGsに積極的に貢献したいという債券発行者すべてに提供されます。規模や地域、セクターによって限定されることはありません。政府や自治体、超国家企業、企業、金融機関も含まれます」としています。

■SDGインベスター・プラットフォーム設立

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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