原田勝広の視点焦点:ミャンマー、日本企業声上げよ

シンガポールのフレイザー・アンド・ニーヴがMBLから撤退するのに伴い、キリンホールディングスシンガポールがその全株(55%分、現在は51%)を取得するという形での進出でした。合弁相手は、国軍系とはいえ、退役軍人の年金ファンドとして設立された投資会社です。

契約の際、キリンはふたつの要求をしています。ひとつは数%あった国防省のMBL株を一般株主に売却してもらうこと。もうひとつは、MEHPCLがMBLから受け取る収益を軍事目的には使用しないという条件をつけたことです。これにより、キリンは法的な問題をクリアーしたわけです。

このようにキリンは極めて慎重にことを運びました。いわば万全の構えで進出したわけです。事業は順調でしたが、のどに刺さった小骨のような問題がありました。第二次世界大戦後にまでさかのぼるラカイン地方のロヒンギャ難民問題です。軍事政権は弾圧を強化していましたが、ミャンマー国民自体が「ロヒンギャはバングラデシュからの不法移民」と問題視していませんでした。ここに油断があったのかもしれません。

キリンと国軍係企業の合弁解消表明を1面トップで報じる現地紙(北角裕樹氏撮影)
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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs#ビジネスと人権

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