400社を越える日本の進出企業は、頭の上の嵐が行き過ぎるのをひたすら待っているだけなのでしょうか。人権とビジネスは今や世界の関心事です。政治と経済は別だという理屈は説得力を持ちません。国軍系企業と関係があるかどうかも問題ではありません。ビジネスを展開しているその国の国民が不当な人権蹂躙に苦しんでいる時、解決に向けどう関わっていくのか、企業としての人権意識、SDGs、ESGの本気度が問われているのです。SDGsに熱心とされるトヨタ自動車やデンソー、三菱商事あたりに抗議のアピールを期待できないものでしょうか。
合弁解消や撤退ばかりを議論するのは奇異に映ります。仮に撤退するにしても容易ではないし、新たな問題が発生するからです。国軍を批判してミャンマー脱出を試みたノルウェーの通信大手、テレノールのケースが参考になります。ミャンマーの国内事業を6月にM1グループに売却すると発表しました。レバノンのミカティ家が所有する持ち株会社ですが、この一族は国軍とつながりがあるといわれています。このため、人権NGO、ジャスティスフォーミャンマーは「テレノールのミカティ家への売却は軍事政権による監視をさらに強化する。活動家、ジャーナリスト、軍地政権に反対する人々の生命がより大きな危険にさらされる」として、売却を取り消すよう要求するとともに、OECDの人権機関に提訴する動きを見せています。
日本企業としては、撤退を議論する前にやることがあるはずです。それは軍事政権に、人権や民主主義を守るよう求めることです。一社や二社では潰されるでしょうから日本企業としてまとまる必要があります。キリンにはそのまとめ役を果たすことを期待します。SDGs、ESG先進企業にとっての責務です。
(完)