原田勝広の視点焦点:アフガン女性はどこへ?

いまアフガンは、資産凍結や国際通貨基金(IMF)、世銀の支援の停止による経済混乱、食料不足で早くも苦境に陥っています。こうした中で懸念されるのが人権問題、特に女性への抑圧です。アフガン支援のため、国連安保理は17日、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の活動を6か月延長する決議を採択しましたが、「アフガンでの包括的政府の樹立と女性の完全で平等かつ有意義な参画の重要性を強調する」と強調しています。

こうした国際的な期待を裏切るかのように、タリバン政権はこれまで女性の社会参画を後押ししてきた前政府の「女性問題省」の建物表示を、突然、「勧善懲悪省」なる名前に変更しました。旧タリバン政権は女性の教育、就労を禁じたほか、娯楽も認めませんでしたが、これを思い出させます。

新たなタリバン政権が旧政権と同じなのか、どこまで改善するつもりなのかは現時点では不明ですが、心配は募ります。教育省はこのほどが男子生徒に対する授業を再開しましたが、女子生徒への呼びかけはありません。

国連開発計画(UNDP)は、政治、経済の混乱で、2022年半ばまでにアフガン国民の97%が貧困に陥る可能性があると指摘する一方、特に女性と女児の権利を守ることが最優先課題だとして、改善のための支援を提案しています。

国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウは「過去20年間において女性の教育へのアクセス、女性の生活の向上が進められてきた地域もある。新政府には他民族の社会構成およびジェンダーに配慮した包括的な政権の樹立を要請する」として、他の国際NGOとともに国連人権理事会に「アフガンの人権状況に関する新たな調査メカニズムを設置するよう求める」とアピールしています。

アフガンで女性の人権が守られるよう世界の監視の目を緩めることはできません。           (完)

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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