【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス(15)

国内のアニマルウェルフェアの取り組みを評価するアニマルウェルフェアアワードの受賞企業が決定し発表した。2021年度の取り組みを評価した。2021年度のアニマルウェルフェアの進歩は大きく、実際に「具体的な取り組みに進んでいない」とした昨年の課題はクリアされ始めている。畜産動物のアニマルウェルフェアに取り組むNGOとして今回評価した4社を紹介しよう。(認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事=岡田 千尋)

2021年度はアニマルウェルフェアが進歩

■鶏賞:採卵鶏部門はニッコクトラスト

ニッコクトラストは、運営している内閣府の食堂をケージフリーに切り替えた。アニマルウェルフェアの重要性を認識し、取り組みの影響を最大化できるとして内閣府側の了承を得て切り替えを実行。ニッコクトラスト側の努力によるものであるが、東京五輪が開催されていたこの時期に、日本政府の中でアニマルウェルフェアの動きがあったことは大きい。

同じ業界では外資のコンパスグループ・ジャパンがアニマルウェルフェアの取り組みについては先をいっているが、ニッコクトラストは植物性タンパク質を取り入れることにも積極的だ。畜産物は持続可能性への影響が大きいからこそ、良いものを少量に切り替えていかなくてはならないが、そのあり方を給食委託会社としてできる中で最大限実現していると言える。

■鶏賞:肉用鶏部門は山梨県

山梨県は国内で初めて肉用鶏を含めた認証をスタートさせた。その最も良いレベルの基準は国際的なアニマルウェルフェアのニーズに十分適うものだ。これまで国内では、消極的で低い基準に甘んじてきたケースが多く、NGOとしては評価ができない状態にあった。日本のアニマルウェルフェア発展が遅延する中、市民にも世界にも認められる基準を策定したことで、日本でのアニマルウェルフェア発展に希望をもたらした。目指すべき姿が明確になることは、生産者にとっても畜産物を調達する企業にとっても、もちろん市民にとっても、前向きで良い結果をもたらすだろう。

■豚賞は日本ハム

日本ハムは昨年度大きく変化したように見える。5月にはアニマルウェルフェアへの取り組みを重要課題に入れ、11月には2030年までに妊娠ストールに豚を閉じ込めない飼育に移行することを発表した

アニマルウェルフェアのポリシーとともに、飼育・輸送・と畜のガイドラインも策定し、また植物性タンパク質への移行の数値目標も策定している。その他に、と畜場の課題であった飲水設備の整備も来年中までにすべて終える予定だ。

生産者としても、食品メーカーとしても、国内企業としての先進的取り組みのあり方を示したと言える。国内トップの食肉加工会社として、十分にリーダーシップを発揮する企業になったのではないだろうか。

■牛賞はバードフェザー・ノブ(TORIBA COFFEE)

銀座に店舗を構えるTORIBA COFFEEでは、2020年に発表していたエシカル宣言に追加して「続エシカル宣言10か条」を策定した。この取り組みの一つとして、乳牛のアニマルウェルフェアに取り組んだ。

店舗ではアニマルウェルフェアの高い放牧のミルクと、オーツミルクやソイミルクなど複数の植物性ミルクを選ぶことができ、また植物性ミルクのほうが選びやすい価格になっている。

この形態は、まさに国際的な動向の先を行くもので、例えば今年1月に英国のスターバックスは複数の植物性ミルクを追加料金無しで選択可能になったと発表したばかりだ。

カフェがアニマルウェルフェアに取り組む理想的な形を示し、その取り組みをエシカル宣言という形で公にしながら、素早く行動に移した点も今どきで爽快だ。

2021年度は、アニマルウェルフェアを取り巻く環境が大きく変化し、多くの企業がアニマルウェルフェアについて言及するようになった。

それでもなお、日本の畜産におけるアニマルウェルフェアは世界と比較すると低いままなのはなぜか。それは世界がより早いスピードで変化し、より高いアニマルウェルフェア飼育に移行しているからだ。

数年前であれば高く評価されたであろう取り組みは、今やスタンダードになり、評価を得にくくなっている。日本企業は取り組みの速度を加速しなくてはならない。早くに取り組めば価値に代わるが、みんなが始めてから取り組むのではそれはただの負担とコストになってしまう。

これは脱プラスチックへの対応で多くの企業が学んだことなのではないだろうか。

アニマルウェルフェアはビジネス課題でもあり、社会の持続可能性の課題でもあり、そしてなにより生命の課題だ。より優先度をあげて、また現在の取り組みに満足することなく、この課題に取り組んでくれることを願っている。