脱炭素で煮え切らない日本、国際社会から厳しい視線

記事のポイント


  1. 「脱炭素目標について、日本は国際社会から期待されなくなった」
  2. 国連の「ネットゼロ基準」の策定に関わった三宅香氏は指摘した
  3. 日本は国際社会からどう見られているのか、三宅氏に聞く

国連は昨年11月、10項目の提言からなる「ネットゼロ基準」を策定した。この基準づくりには国連のアントニオ・グテーレス事務総長が招集した17人の専門家が関わったが、日本からは三宅香・日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)共同代表が選ばれた。国連はこの基準をもとに世界各国の脱炭素施策を強化していくことを狙うが、三宅氏は「日本は国際社会から期待もされなくなった」と明かす。国際社会から批判を受けながら、石炭火力に依存し続ける姿勢を変えない日本に、「世界は諦めてもいる」と危機感を示す。(オルタナS編集長=池田 真隆)

国連の「ネットゼロ基準」の策定に関わった三宅香・JCLP共同代表

JCLPによる国連「ネットゼロ基準」の翻訳版

1: ネットゼロ宣言
ネットゼロ宣言は、組織のトップによって公表され、公正な形で割り当てられた責務(フェア・シェア)を反映したものでなければならない。

2: ネットゼロに向けた目標の設定
バリューチェーン全体について5年毎の短期目標を設定し、具体策を示さなければならない。これらの目標と具体策は、IPCC又はIEAが示す1.5℃整合経路と整合する必要がある。

3: ボランタリー・クレジットの活用
自主的炭素市場における信頼性の高い炭素クレジットは、バリューチェーン外の削減貢献として使用されるべき。中短期の排出削減量として計上されてはいけない。

4: 移行計画の策定
非国家主体は、包括的なネットゼロ移行計画を公開しなければならない。

5: 化石燃料の段階的廃止と再生可能エネルギーの拡大
ネットゼロ計画に化石燃料の新規供給支援を含むことはできない。化石燃料供給への新規投資の余地はなく、既存の資産の廃炉や撤退が必要。

6: ロビー活動とアドボカシー活動の整合
いかなるロビー活動も、気候変動対策に反対するものではなく、それらを積極的に推進するものでなければならない。

7: 公正な移行における人と自然
土地利用からの排出量が多い主体は、2025年までに、サプライチェーンを含む自らの事業や活動が森林破壊、泥炭地の消失、残された自然生態系の破壊に寄与しないよう手段をとらなければならない。

8: 透明性と説明責任の向上
各主体は自ら設定した基準値と比較できる形で、毎年の進捗を公にしなければならない。それは独立組織によって検証されることが求められる。

9: 公正な移行への投資
金融機関や多国籍企業が政府、多国間開発銀行、開発金融機関と協力し、一貫してより多くのリスクを引き受け、途上国のクリーンエネルギーへの移行に対する投資を大幅拡大する目標を設定するなど、開発のための新しい取り決めが必要である。

10: 規制導入の加速に向けて
公平な競争条件を作り出すため、規制当局は、影響力の大きい民間の排出者を対象とした規制と基準の策定に着手すべき。各国は、国境や規制領域を超えて規制当局を招集する、「ネットゼロ規制に関するタスクフォース」を新たに発足させる必要がある。

海外NGOから「注意さえ受けない」

「3年ほど前までは日本にリーディングポジションを取ってほしいとよく訴えられた。その表情から切実さも感じた」

こう話すのは、三宅香・日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)共同代表だ。気候変動対策について話し合う国際会議に出席したとき、世界から集まった専門家やNGO担当者から切迫した表情でよく訴えられたと言う。

しかし、今はどうか。三宅氏は、「日本は国際社会から期待されなくなった。海外のNGOから注意さえ受けない。相手にされていない」と嘆く。

もちろん、これは三宅氏の肌感覚だ。日本は海外のNGOから批判を受けていないわけではない。

気候変動について話し合うCOP(気候変動枠組条約締約国会議)ではNGOたちが気候変動政策に非協力的な国を「化石賞」として表彰している。日本は「化石賞」の常連国であり、昨年11月にエジプトで開かれたCOP27でも表彰されたばかりだ。

しかし、国際会議に出席し、各国の専門家と議論してきた三宅氏の感覚では、「期待されなくなった」という。

脱石炭に踏み切らない日本に厳しい視線

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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