ビールびん「国内最軽量」に込めた思い

◆軽量化と強度の両立をクリア

パッケージ開発において業界を牽引する技術力は、今回発売される国内最軽量の330ミリリットルワンウェイびんでも存分に生かされている。これまで国内最軽量だった同容量のワンウェイびん(重量170グラム)「まろやか酵母」より重量を2割近く軽減し、国内最軽量を更新する140グラムを実現した。

パッケージング技術開発センター の小田朝巳氏

これにより、従来びんに比べ、製造時のCO2排出量は1本当たり23グラム削減できる。軽量化にあたっては、強度を維持しながら、いかにムダを省くかが課題になった。びんの成形では、口部から首部にかけて肉厚になる特性がある。

それを改善するためにカブラと呼ばれる口部の内側をへこませる成形方法を開発した。また、ラベルを貼る部分に浅いくぼみをつける一方で、びん同士が接触する部分と底部コーナーには厚みを確保した。

一番の苦労は安全面の確認だったという。「軽くなったら割れやすくなったでは困るので、強度の評価は繰り返し行いました。長距離輸送に耐えられるか調べるために2千キロメートルの距離を運んだり、レジ袋に2本のびんを入れた場合、びん同士が袋のなかで接触する状況なども想定したりして、100回以上強度の確認を行いました」(小田朝巳)

さらに、飲みやすさを考慮し、口径を広めにとることで、口当たりが良く、香りの広がるびんに設計した。

◆協働で生かされる技術力

今回発売する「グランド キリン」には、包装容器の3Rの一環として、梱包にハーフトレーとシュリンクフィルムを採用し、使用する段ボールの量を通常の約半分に抑えている。

昨年、キリンホールディングス、イオン、花王が中心となって立ち上げた「日本版TCGF(ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム)」の活動の一環として、競合他社と飲料カートンを標準化する試みも始まっている。

①成形方法の開発により口部から首部の肉厚を改善 ②びん同士が接触する部分の肉厚を確保 ③底部コーナーの曲面径を大きくし、肉厚を確保

「TCGFは、持続可能な社会の実現に向けて、消費財流通関連の企業が共通の課題に取り組む組織です。これまで我々が培ってきた技術力を生かしていきたい」と、松島康之センター長は胸をはる。

「環境負荷の軽減という視点から、パッケージ技術の開発にはまだ余地はあると考えています。できれば素材にまで踏み込んで取り組んでいきたい」

キリングループは、1985年から2011年の間に、容器包装の製造にかかるCO2排出量を約230万トン削減した。それは、ガラスびん、アルミ缶、ペットボトル、段ボールカートン、6缶パック板紙の軽量化によるものだ。

そのCO2削減量は、1本のスギの木が1年に吸収するCO2 吸収量に換算すると、約1億6436万本に当たる。バリューチェーン全体を通じて、環境負荷軽減に取り組むキリングループにとって、パッケージの軽量・減量化が果たす役割は大きい。消費財メーカーとして、限りある資源にどのように向き合っていくのか。キリンビールの挑戦はこれからも続く。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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