記事のポイント
- コメの価格上昇を抑えるため備蓄米の放出が始まった
- だが、「競争入札」で備蓄米が出回らないのは「常識」だ
- 小泉農水大臣はコメの輸入を示唆するが、どこに行きつくのか
この連載は「常識と非常識の間」ということで始めたが、「常識」が別の視点から見れば非常識であったり、その逆もあったりする。そして多くの場合、真実はその真ん中あたりにある。だから当たり前と思っている常識も、時々は疑ったり検証してみたりすることが大切だ。
今、世界は再び戦争の時代になりつつある。グローバル化を先導してきた米国が一国主義に舵をきり始めた。東アジアではロシアと連携を始めた北朝鮮と中国。こうなっては米国の尻尾を必死でつかまざるを得ない韓国と日本。台湾有事でシーレーンが封鎖されれば、たちまち国の存立の基本である食料とエネルギーの枯渇に見舞われそうな「孤立する日本」という構図をリアルに感じるようになってきた。
備蓄米を巡り、安さだけを求める表層的報道に辟易している。今は、小泉進次郎新農水大臣が就任早々断行した「備蓄米の随意契約」によって中間を省き小売事業者と直接契約し、5㌔㌘2千円という価格で拡販しているニュースで埋まっている。その先に何があるのか。
そもそもコメの価格上昇を抑えるため備蓄米の放出が始まったが、最初の「競争入札」は高い価格を提示したものに落札される。
事実、当初の落札価格は60㌔㌘あたり2万2737円で、90%以上をJAが落札。日本農業新聞の記事によると、備蓄米の政府買い入れ価格は1万1879円とあり、原体のまま2万2737円で売るのは暴利以外の何物でもない。
これではJAが買い負けした21万㌧を政府が備蓄米を使って補給したといわれても仕方ない。そのころ
の生産者価格は3万円を超える勢いで、4万円超えの声も聞こえていた時期だ。JAは労せずして、極めて安いコメを手に入れたことになる。