戦争時にはデジタル・サプライチェーンが企業競争力を左右

記事のポイント


  1. 未来調達研究所は、「イラン戦争における調達・購買部門の構造的変容」レポートを公表した
  2. 「調達・購買部門は『コスト削減の機能』から『地政学的レジリエンスの司令塔』に変貌した」と指摘
  3. 企業の購買担当者は、最悪のシナリオを前提とした長期的な調達網の再構築が求められるという

未来調達研究所は、「イラン戦争における調達・購買部門の構造的変容」に関する分析レポートを公表した。「AI・デジタルツインを活用したデジタル・サプライチェーンの完成などが、企業の競争力を左右する。購買担当者は、最悪のシナリオを前提とした長期的な調達網の再構築を急がねばならない」と結論付けた。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

戦争時の企業の調達戦略をどう考えるか

未来調達研究所は調達・購買・資材コンサルタントの坂口孝則氏を中心とした会社であり、レポートは3月23日時点の情報による。

イラン戦争は、2月28日の「エピック・フューリー作戦」開始から約4週間が経過し、IEAが「史上最大のエネルギーおよび食料安全保障の試練」と位置づける事態」へと発展している。

企業の調達戦略は今、「効率性重視」から「生存保障型(BCPモード)」へと根本からの作り変えを強いられている。ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、エネルギー価格の暴騰のみならず、あらゆる産業の調達・購買部門に前例のない試練を与えている。

レポートの7視点ならびに結論の要旨は次の通りだ。

1.価格高騰の構造とマクロ経済への波及

価格高騰はエネルギー、物流、原材料の三方向から企業の利益を圧迫している。ダラス連銀のモデルによれば、封鎖が1四半期続けば世界実質GDP成長率は年率2.9ポイント低下すると試算されている。

2.産業別の調達困難品目と供給断絶の実態

ホルムズ海峡(原油消費量の約20%が通過)の封鎖により、日量約1,000万バレル(サウジ・UAE・イラク合計)の供給が失われた。タンカー通航量は94%減少し、多層的なサプライチェーンが麻痺している。

石油化学産業の日本への影響は、エチレン生産の95%をナフサに依存し、その74%が中東産である。出光興産、三菱ケミカル、三井化学などが相次いでエチレンプラントの減産・生産調整に踏み切っており、他社でも同様の検討が進んでいる。

自動車産業では、 プラ原料高騰により車両1台(プラ使用量150-200kg)あたりの原材料コストが25%上昇した。トヨタは中東向け生産を削減、日産も国内生産を削減した。

(この続きは)
■主要企業の緊急対応と代替調達の確保
■テクノロジーと新発想による「戦時下」の調達革新
■脱炭素(GX)とレジリエンス投資の劇的加速

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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