記事のポイント
- 神宮外苑地区の再開発など、日本でも大規模再開発のあり方が問われている
- スイスには議会が通した政策などを、市民が住民投票にかける制度がある
- 投票結果には法的拘束力があり、国や自治体の決定を覆すこともできる
神宮外苑地区の再開発など、日本でも大規模再開発や公共空間のあり方を巡り、「市民の声をどう政策に反映させるか」が大きな課題となっている。一方、スイスには、建築・都市開発に伴う予算や法改正について、市民が一定数の署名を集めることで住民投票(レファレンダム)を実施できる制度がある。このレファレンダム制度の投票結果には法的拘束力があり、国や自治体が決めた方針などをひっくり返すこともできる。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

「スイスに学ぶ『市民が都市を決める』仕組み」と題したオンラインセミナーがこのほど開かれた。主催したのは、米シカゴ出身の経営コンサルタントで、神宮外苑再開発の反対運動の呼びかけ人でもあるロッシェル・カップ氏だ。
カップ氏はイェール大学を卒業後、1988年に安田信託銀行(当時)へ入社し、30年以上に渡って日米のビジネスや異文化コミュニケーションの橋渡し役を務めてきた。現在はジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング(東京・港)の代表を務める。
同セミナーのゲスト講師を務めたのは、スイス・バーゼル市で約20年間暮らし、都市計画や建築設計に携わってきた建築家の木村浩之氏。現地で数々の都市計画やコンペティションに関わってきた経験を基に、スイスの直接民主主義が街づくりにどのように組み込まれているのか解説した。
■「社会に貢献すること」を憲法で定めた
木村氏は、スイスの民主主義を理解するには憲法を見ることが重要だと指摘した。スイス憲法第2条では、「公共の福祉」「持続可能な発展」「文化的多様性」「自然の生命基盤の永続的な維持」が国家の目的として掲げた。さらに第6条では、「自らの能力で社会や国家の課題に貢献すること」が国民の責任として定めた。
市民は行政サービスの受け手ではなく、社会をともにつくる主体である――。この考え方が、都市計画制度にも反映されているという。
スイスでは財産権にも関わる都市計画変更は立法府が判断し、市民はその決定に対して異議を申し立てる権利を持つ。
さらに計画づくりの初期段階から、市民参加法に基づきワークショップやオープンスタディ、設計コンペなどを実施し、市民が計画策定に関わる。
計画案がまとまると告示され、市民は異議申し立てができる。異議が出されれば計画はいったん停止し、行政は修正や説明を求められる。それでも合意に至らなければ、市民団体による訴訟や住民投票へ進むこともある。
■市民が政策を覆すレファレンダム
■世界的建築家にも市民がNO突きつける
■市民をともに街をつくる主体と位置付け

