[映画評:禁じられた歌声]恐怖政治に支配された古都の悲劇

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世界遺産にも登録された西アフリカ・マリ共和国の古都、ティンブクトゥ。この街をイスラム過激派が占領して恐怖政治を敷いたことで、自由を奪われた人々に降りかかる災難を描いた映画「禁じられた歌声」(アブデラマン・シサコ監督、2014年フランス・モーリタニア作品、97分)が12月に都内で上映される。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■2013年まで過激派が支配

映画「禁じられた歌声」 (c)2014 Les Films du Worso (c)Dune Vision

映画「禁じられた歌声」 (c)2014 Les Films du Worso (c)Dune Vision

かつて砂漠を往来するキャラバンの要衝として栄えたティンブクトゥは、文化や芸術が豊かに花開いたことでも知られる。ところが2012年、外国から流入したイスラム過激派がこの街を占拠。極端なイスラム法理解にもとづく恐怖政治が翌年まで続いた。

音楽やサッカー、タバコなどは禁止。もし見つかれば即決裁判で処罰される。マリ北部の街で、若い事実婚カップルが石打ちにより処刑されたことを下敷きに作品は製作された。地元の長老が過激派のリーダーに「イスラムが教えるのは寛容と許しだ」と説得を図るが、恐怖政治のブレーキはかからない。

恐怖と不条理が支配する街ではただ一人、精神を病んだ女性だけが鮮やかな服をまとい、自由に歌い笑うことを許されている。住民に厳しい戒律を強要しているイスラム過激派の幹部も、この女性の家ではタバコを吸い、踊りを舞う。

作品はイスラム過激派の恐怖政治がもたらす悲惨を告発するが、一方で彼らを単純な絶対悪として描いてはいない点にも特徴がある。彼らでさえ弱さや迷いを抱えた人間なのだ。

また映画の中で、ティンブクトゥに流入した過激派がリビアからやってきたことが示唆される。欧米の介入もありカダフィ大佐の独裁が崩壊したリビアは混乱状態に陥り、結果的にイスラム過激派の跳梁をもたらした。「テロとの戦い」「民主主義の実現」という大義名分だけでは見えない現状を描き出した作品だ。2015年フランス・セザール賞7部門を受賞した。

12月26日から東京・渋谷ユーロスペースで上映。また同会場で開かれる「イスラム映画祭」でも12月12日に上映予定だ。

映画「禁じられた歌声」公式サイト

2015年11月26日(木)12:14

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