「志」を求める若者たち(13)--車いすでも気軽に外出(NPO法人Check)

「志」を求める若者たち(13)

車いすでも気軽に外出 NPO法人Check(チェック

高齢者・障がい者・授乳児連れの人などが日本全国どこでも安心して外出するには多機能・多目的トイレが必要だ。旅行代理店で働き、それに気付いた一人の青年が全国のトイレマップ「Check A Toilet(チェックアトイレット)」をネット上で作成する活動を戦略的に事業化した。(聞き手 今一生)=文中敬称略

金子健二(30歳) NPO法人Check代表理事。関東学院大学経済学部卒

(本誌オルタナ19号P39からの続き)

――ユニバーサル社会を実現する中で誰もが使えるトイレの必要性をより多くの方に知っていただくには、社会啓発が重要になってきますね。

金子 今後の展開としては、車いすの方にも同行して頂き、JTや日本財団の社内ボランティアの方々と一緒に近所のエリアにどれだけ多機能トイレがあるのかを探し歩こうという企画もあります。多機能トイレや多目的トイレがないと困るのは、車いすの障がい者の方ばかりでなく、高齢化の時代では尿漏れを不安に感じている中高年以上の方々も該当しますし、授乳に悩めるお母さんたちやメイクで混雑するのに気を揉む若い女性も該当します。

――要するに、多機能・多目的トイレは、ほとんどすべての人に必要になると。だからこそ、車いすユーザの当事者と一緒に使用感を確かめる必要があるんですね。一緒に街を歩いていけば、自分がいざ車いすユーザになる年齢の頃に困ることがすぐにわかるだけでなく、何が不便なのかも当事者たちが気付かせてくれるので好都合ということなんでしょうね。

金子 そうなんです。旅行会社で旅行企画を立てていた時も、一人でも車いすの方がおられるなら、トイレの問題がとても重要なテーマになるのに、車いすでも使えるトイレがどこにあるのかがさっぱりわからない。

会社にはいろんな観光地についてのデータベースはあるけれど、トイレ情報はありません。観光協会に問い合わせても要領を得なかったんですね。ですから、今のような活動を始める際も、車いすを利用される方の意見を聞く必要がありました。

当法人の今西正義副理事は、高校3年の時に海で飛び込み中、首の骨を折り、頚髄損傷で手足が全く動かず常時電動車いすを利用しています。

35年前に重度の頚髄損傷者の「全国頚髄損傷者連絡会」の設立にかかわり、以来地域の中で障がい者が自立生活を行える社会条件「所得保障」「就労の確保」「まちづくり」「移動の確保」「住宅・福祉機器」などの確立に向けた活動を続けています。

社福・東京コロニー・トーコロ情報処理センターで14年間システムエンジニアとしてソフトウェアの開発に携わって、その後、福祉関連専門の旅行会社「株式会社トラベル・ネット」(社団法人ゼンコロ、JTB、三菱商事出資)設立時に移籍する。自ら国内・海外の下見を行い、障がいを持つ人の視点からハード、ソフト両面の検証を行いバリアフリーツアーに反映してきてます。

また、2000年にトラベル・ネットが解散した時にJTBに移籍。JTBでは福祉専門個所「バリアフリープラザ」でバリアフリー情報の収集を行い旅行商品の企画・開発やバリアフリーツアーへの参加者の相談などでノウハウを活かしてきています。さらに、2005年には、福祉用具等の物づくり、まちづくりのバリアフリーに関しユーザービリティの視点にたつコンサルティングを行う「合資会社ウエストナウ」を独自に立ち上げるなど、アクティブな方です。

――いま、車いすユーザーでも、かなりアクティブになってきましたよね。

NPO法人ノワールは、積極的にトークイベントを開催して恋愛や性について人前で語っていますし、新潟のNPO法人ホワイトハンズは障がい者の性的介助支援に乗り出しています。チェックのトイレリサーチ活動にも是非参加してほしいですね。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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