ネパールの土石流は「人間活動による温暖化が決定打」と科学者ら

記事のポイント


  1. ネパールの土石流と人為的な気候変動による関係についての分析結果が出た
  2. 科学者で構成する英ワールド・ウェザー・アトリビューションが明らかにした
  3. 人間活動による温暖化が地質的リスクと連鎖して壊滅的な土石流の決定打に

科学者らで構成する英ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)は2026年9月16日、8月にネパールで発生した土石流の原因についての分析結果を公表した。2015年のネパール地震でひび割れた地質リスクがあったところに、人類が温室効果ガスを排出し続けたことで温暖化が進み、氷河の後退や永久凍土の融解を招いた。氷が溶ける境界線も10年あたり約100メートルのペースで上昇しており、前年の異常な降雪量や、今夏の異常な高温も今回の災害に影響していた。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

「人為的な気候変動による影響であることに疑う余地はない」と科学者ら
(c) World Weather Attribution

2026年8月26日にネパールを襲い、死者1000人超、行方不明者5500人超を出した壊滅的な土石流災害について、国際的な科学者らで構成する英ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)が最新の分析結果を発表した。

WWAの評価手法は、イベント・アトリビューションと呼ばれる。猛暑や豪雨、そして今回のネパールで起きた土石流のような極端な気象現象(イベント)について、人間活動による気候変動がどの程度影響しているかを定量的かつ科学的に評価・分析する。

WWAの創設者で英インペリアル・カレッジ・ロンドンのフレデリケ・オットー教授らは、同日開催されたオンライン記者会見の中で、今回の災害は、従来のインフラ整備や避難警告といった適応策の限界を完全に超えていたと指摘した。

■地質リスクと気候変動が連鎖した複合的災害

WWAは、今回の災害を単一の極端気象ではなく、地質的リスクと数年から数十年というスケールで進行してきた温暖化の影響が連鎖して引き起こした、複合的な災害だとまとめた。

蘭ユトレヒト大学の山岳水文学者ウォルター・イマジル教授は記者会見の中で、2015年にマグニチュード7.8を観測したネパール地震によって、岩盤内部に多数の微細なひび割れが生じ、斜面の岩盤が弱体化していた可能性に言及した。そのうえで、そうした地質的なリスクに負荷をかけたのが、人類が温室効果ガスを排出し続けたことによる温暖化の影響だ。イマジル教授は記者会見で次のように説明した。

「要因の一つ目は、永久凍土の融解だ。崩落は標高4500~5500メートルの範囲で発生したが、この地域は、永久凍土が温暖化や岩盤の亀裂の融解に対して特に敏感な地帯に当たる。そのため、岩盤の強度が低下すると斜面内部に、より多くの水が浸透するようになる」

「二つ目の要因は、氷河の変化だ。この地域一帯の氷河は2000年以降、年間0.5メートルずつ薄くなっている。特に、崩落した斜面に近い氷河は2010年から2026年までの16年間で約300メートル以上後退していた。氷河は岩壁を支えているため、氷河が後退すると岩壁にかかる力も変化する。したがって、これも重要な要因となった可能性が高い」

「もう一つの要因が、温暖化によって、大気中で水が凍結する境界線『零度等温線』が上昇していることだ。零度等温線は、モンスーン期の夏に最も高く、冬に最も低くなるが、この等温線自体が1980年代以降、10年あたり約100メートルのペースで上昇を続けている。今回崩落した岩壁のベース部分から崩壊地点までの標高3800~5150メートルの間に、この零度等温線が位置している」

「零度以上の気温が続けば、凍結した氷が液体に変わり、それが再び凍結するということが頻繁に繰り返されると、結果として亀裂に様々な力が加わることになる」

■前年の異常な降雪や8月の異常な高温も引き金に

さらに、直前の気象条件も引き金となったと、イマジル教授は続ける。

「2025年10〜11月、ヒマラヤのこの地域としては異常といえる300ミリメートル以上の降雪があった。通常、10~11月は非常に乾燥しているため、降雪が溶け残ることはない。だが、降雪量が多かったため、2026年の春から夏にかけて、大量の融雪水を生み出した。これも引き金となった可能性がある」

「さらに崩落直前の8月24〜25日は異常に高温だった。崩壊地点の標高5150メートル地点での日平均気温は約5℃(平年の8月に比べて5℃ほど高い)、日の最高気温は(平年を7℃ほど上回る)11~12℃前後に達していた」

異常な高温については、「人為的な温暖化によって、この地域のモンスーン期にあたる7~8月の気温が約1.5℃、年間平均気温は約2.0℃押し上げられていた。人為的な気候変動がなければ、1.5℃や2.0℃、上乗せされることはなかった」とオットー教授が補足した。

■時速188キロメートルで集落を呑み込んだ
■ネパールのGHG排出量は世界の0.01%
■「人為的な気候変動が影響したことに疑いの余地はない」

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #気候変動

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