CSR は「ヨソモノ」「バカモノ」「ワカモノ」視点で【戦略経営としてのCSR】

ただし、異なるバックグランドをもった外部の視点から議論するためには、「どうすべきか」の議論の前に「どうしたいのか」という共通の目標なり価値のコンセンサスをとることが不可欠だ。創業以来の歴史的文脈や良質な製品という生産者視点を中心とした考え方からは新しい発想は生まれない。「どのような」社会のニーズに、どう対応するのかという社会(消費者を含む)視点による共通の目的意識や問題認識があるからこそ、外部のステークホルダーとの対話を通した解決策の模索を可能にする。

CSR部は段取りを、実践は現業部門で

無論、「ヨソモノ」を取り込むときに解決策について安易な即答を求めないことだ。もともと簡単に解決できない課題に対して、他社事例など安易な答えを求め、いくら真似しても意味がない。むしろ、「ヨソモノ」の視点から、自社のおかれた状況を前提に、関係あるステークホルダーと一緒になって議論を重ねながら問題の解決策を模索することに意味がある。

外部視点を取り込みながら議論を重ねることで、結果として、イノベーション的な解決策を見出す。それを実践するのが、ステークホルダーダイアログである。議論の対象は、当該企業活動に対する規制についての議論から、社会問題の解決策の模索まで、多種多様なものが想定される。どのテーマを議論しても共通していることは、問題解決を企業だけで考えるのではなく、ステークホルダーを巻き込みながら、新しい視点に基づく解決策を模索していくプロセスをたどることだ。それこそがCSR 活動である。議論の過程そのものも開示し、組織としての説明責任を果たしていくことで、社会から評価されるようになる。

このような中で、CSR部は、現業部門が「ヨソモノ」と付き合うための段取りを行う役割を果たすことだ。実践は現業部門が行うからこそ、企業活動に統合されていく。CSR部には、対話や議論すべきテーマは何か、どのようなステークホルダーと付き合うべきかといった環境変化を察知し、実行を指南していくことが期待される。

【おおくぼ・かずたか】新日本有限責任監査法人シニアパートナー(公認会計士)。新日本サステナビリティ株式会社常務取締役。慶応義塾大学法学部卒業。教員の資質向上・教育制度あり方検討会議委員(長野県)。大阪府特別参与。京丹後市専門委員(政策企画委員)。福澤諭吉記念文明塾アドバイザー(慶應義塾大学)。公的研究費の適正な管理・監査に関する有識者会議委員。京都大学・早稲田大学等の非常勤講師。公共サービス改革分科会委員(内閣府)ほか。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第5号(2013年2月5日発行)」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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