シャープ、竹中工務店、九大発ベンチャー: 宇宙産業に得意の技術で挑む

記事のポイント


  1. シャープ:半世紀にわたる宇宙用太陽電池の実績が新たな開拓に
  2. 竹中工務店:月に40人が長期滞在する「住」と「食」に挑む
  3. 九大発ベンチャー:小型衛星データが全天候での地表観測を正確に

宇宙開発の中心が、政府など公的機関から民間にシフトしている。民間企業が創出する技術や、ベンチャー企業が宇宙ビジネスを牽引し、日本企業は優れた技術を活用して宇宙ビジネスにも挑戦している。「国際宇宙ビジネス展」に見る3社の取り組みは、地上で発揮した技術や研究開発内容を、宇宙産業でも進化させるものだ。(経済ジャーナリスト・海藤秀満)

JAXAの火星衛星探査機にはシャープ製の宇宙用太陽電池・モジュールが採用されている(写真左の部分、2026年5月27日撮影)

5月27日から3日間、東京ビッグサイトで開かれた「国際宇宙ビジネス展」には国内外の約250の企業や大学、組織が出展した。

世界の宇宙ビジネスは国や政府などの公的機関主導から、民間へとシフトしている。民間企業が創出する低コストで革新的な技術や、ベンチャー企業が、「輸送」「衛星」「宇宙科学・探査」など広範に及ぶビジネスを牽引している。

日本企業は得意分野の技術を活かして、さまざまな宇宙分野への貢献を目指している。その中から3社のユニークな取り組みを見る。

シャープの宇宙用太陽電池。手前は表面保護に樹脂フィルムを使用し、柔軟性に富むモデル。

■シャープは半世紀に渡り宇宙用太陽電池分野で実績

シャープは半世紀以前からJAXA(宇宙航空研究開発機構)に認定された、国内唯一の宇宙用太陽電池を供給しているメーカーだ。宇宙用の太陽電池は耐久性や変換効率、高信頼性が要求される。

同社の太陽電池は化合物薄膜セルを使用し、表面保護にガラスやフィルムを使用したタイプがあり、衛星用に軽量化が図られている。

地上用据え置き型の太陽電池は2000年初頭までは日本メーカーが技術、実用化、生産量で世界市場を席巻していたが、現在は中国メーカーに市場競争力を奪われ撤退が相次ぎ、大幅縮小に至っている。

シャープも一時は据え置き型太陽電池で優位だったが、その一方で宇宙用の太陽電池技術を育んでいたのが功を奏し、今後の成長事業として注目される。 地球を周回する人工衛星の軌道のうち、高度2000km以下の低軌道衛星はインターネット用を中心に市場が拡大している。同社はさらにグローバルな顧客を開拓していくという。

40人以上が月で長期滞在できる居住空間を建築

竹中工務店の月面短期滞在モジュール(4人用)の断面模型。手前に袋培養設備などがある。

大手ゼネコンの竹中工務店は、近い将来訪れる、「人類の月への長期滞在」を見据えた滞在施設の研究開発を、住と食の両面から取り組んでいる。その実験例が「宇宙農場システム」で、JAXA、キリンホールディングス、千葉大学、東京理科大学との共同研究だ。

世界初となる「袋培養技術(密閉した袋の中で培養)」を使ったレタスの宇宙での栽培実験を、2021年に国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟内で行い、成功を確認した。この栽培方法で育ったレタスは植物病原菌や害虫の侵入を防ぎ、ウイルスフリーな苗の育成が可能で、月での食糧問題解決の1つになると考えられる。

同社では、2040年頃には少人数の月への継続滞在が、50年頃には40人以上の長期滞在が実現することを想定して、居住施設と食糧問題に取り組んでいる。

NASA(米航空宇宙局)は5月26日、月面基地開発計画を発表し、2032年以降には月の南極付近に長期的に人が住める拠点を築く目標を示した。

2028年には有人の月面着陸計画(アルテミス計画)も予定されていて、人類が月に滞在する拠点や生活のための物資や食糧問題も本格的に研究されている。

九大発ベンチャーは、小型衛星を使って全天候での地表観測が可能に

QPS研究所の小型衛星。金網のようなアンテナは収納性が高く、超軽量でありながら大型だ。従来型の衛星の約1/20の質量と1/100の低コストを実現した(写真は模型)

九州大学発のベンチャー、QPS研究所(2023年、東証グロース上場)は世界トップレベルの高精細小型レーダー衛星を開発し、夜間や悪天候でも宇宙から地球上の対象を高画質で観測できる画像技術を誇る。創業者の八坂哲雄氏は九大名誉教授で小型衛星開発の世界的な権威だ。

従来の衛星に比べ1機あたりの質量が軽く、コストも安い小型衛星は多数の衛星が相互に連携して地球全体をカバーする能力がある。

同社は合成開口レーダー(SAR)方式を採用することで、夜間や悪天候でも宇宙から地表の正確な観測を可能にした。光学式レーダーでは、火山の噴火など雲に覆われた状況を宇宙から捉えるのは難しいが、SARであればその問題を克服して地表の正確な情報を得ることができる。2024年に発生した能登半島地震での被災地の状況把握にも有効だった。

現在同社は9機の小型衛星を打ち上げ展開しているが、2030年までに36機体制にする計画だ。宇宙システムによる地球の社会問題解決への貢献と言える。

さらに同社のユニークな点は、起業した九州の地場産業の協力を得ていることだ。九州のパートナー企業と共に宇宙産業を盛り上げていこうとする機運がある。

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海藤 秀満

産経新聞を経て日経映像で30年以上にわたり株式市場および上場企業の取材・アナリスト業務に携わる。テレビ東京、日経CNBC、NHK WORLD-JAPANの経済情報番組のプロデューサーを数多く務めた。

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