サステナビリティの推進施策はなぜ「手段の目的化」が起きるのか

みずほFGサステナ戦略のキーマンが語る「SSBJ」対応

記事のポイント


  1. サステナビリティ領域の推進施策の多くは「手段の目的化」が起きやすい
  2. その結果、社内浸透が進まず、形骸化した活動になりがちだ
  3. 社内浸透には実効性の高い「ロードマップ」の策定が欠かせない

サステナビリティ領域の推進施策の多くは「手段の目的化」が起きやすい。その結果、社内浸透が十分に進まず、形骸化した活動になりがちだ。サステナビリティを推進するには、実効性の高いロードマップの策定が欠かせない。(サステナビリティコンサルタント=安藤光展)

サステナビリティにおける社内浸透では、自社にあった相性の良いマネジメントシステムもあると考えるが、最も重要なのは実効性の高いロードマップ(中長期の方針・計画)の策定である。我々が50社以上の企業インタビュー、200社以上との継続的な対話で得たエッセンスを紹介しながら、社内浸透戦略の解決案を提示する。

まず、社内浸透の定義だが、辞書的には「(情報や習慣および考え方が)社内に浸透した状態」となる。しかし、実務的解釈はこれでは不十分であり、我々の研究(※)の取りまとめでは、社内浸透は「目的達成のために従業員を巻き込む組織変革プロセス」であり「戦略の実効性を高めるための情報伝達プロセス」であるとしている。

サステナビリティ領域の推進業務の多くは「手段の目的化(形骸化した活動)」が起きやすい。サステナビリティが広範囲で抽象的な概念とされる影響もあるだろう。これらが社内浸透にも大きな影響を与えるため、形骸化を防ぎ実効性を高めるために、常に方向性を明確化する必要がある。我々はこれを「解像度を上げる」と表現している。

組織変革のためにサステナビリティの社内浸透を行う中で「解像度を上げる」ために考えるべき3つのポイント(目的、目標、手段)を紹介する。

1. 目的(Why)
・サステナビリティは何のために行うのか
・サステナビリティを推進する理由は何か
・従業員の何を変化させたいのか

2. 目標(What)
・目的を達成するために何を目指すのか
・目的を実行対象として具現化したものは何か
・何を「あるべき姿」と設定すべきか

3. 手段(How)
・目標を達成するために何をすべきか
・どのような取り組みを行うべきか

社内浸透の施策を考える場合、多くの企業では「手段」から考えることが多い。「どのような研修を行うべきか」「理解度が高まる社内報のコンテンツは何か」などの議論だ。

これらの活動が悪いわけではないのだが、目的・目標の議論を深める前に手段の議論からしてしまうと、それ自体の達成を目的にすり替えてしまい、活動が形骸化しやすい。これでは本質的なゴールを見失い、期待する成果を得られない可能性が高くなる。

■社内浸透は富士フイルムビジネスイノベーションに学べ

手段の目的化を解消する手法の一つに「ロードマップ策定」がある。本来的な目的である従業員の行動変容にフォーカスした全体設計としてロードマップがあると、目的・目標を見失うことなく、具体的な施策まで見通しが立てやすくなる。

では、この行動変容設計におけるロードマップで良い事例を紹介したい。紹介する富士フイルムビジネスイノベーションの事例は、大手企業や上場企業を中心に参考になる例となるだろう。

富士フイルムビジネスイノベーションは行動変容を目指したロードマップを作成した。出所:『サステナビリティ戦略の実装(P149)』

行動変容を目指したステップをロードマップ化して解像度を上げているこの事例では、社内浸透のステップごとに定義を作り、取り組みを明確にしている。特に参考にすべきは、行動変容の前段階と後段階の具体的イメージをまとめている点だ。

社内浸透はKPI特定が難しいとされるが、この前と後の変化自体がKPIとなりうる。サステナビリティにおいて、成果・効果(インパクト評価)は変化が起点になる。そのためこの事例のように「行動の変化幅の定量化」が、KPIとその測定方法となるのである。

サステナビリティにおける社内浸透施策は、このロードマップをいかに具体的に、明確に策定できるかで、解像度が大きく変わる。解像度が高められれば、手段の目的化も起きにくく、成果の最大化も期待できる。目的・目標・手段を整理しロードマップを作成することが、社内浸透施策を大きく動かしてくれるだろう。

※:北田皓嗣,安藤光展(2026)『サステナビリティ戦略の実装:組織行動を促す社内浸透の設計学』千倉書房

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安藤 光展(サステナビリティ・コンサルタント)

専門は、サステナビリティ戦略、サステナビリティコミュニケーション。武蔵野大学非常勤講師/客員研究員。国内上場企業を中心に約20年間サステナビリティ経営支援を行う。著書は『サステナビリティ戦略の実装』(千倉書房)など多数。法政大学/客員研究員。サスコンサルティング合同会社/代表。1981年長野県中野市生まれ。

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