■オルタナ86号(2026年9月発売号)特集「アウトサイド・イン」掲載
記事のポイント
- 商船三井は、自社の運航ネットワークを活用し、海のマイクロプラ問題に挑む
- 三浦工業と共同開発したマイクロプラ回収装置を船に搭載し、航行中に回収
- 海洋表層でのマイクロプラの分布データの蓄積を進めている
商船三井は、自社の運航ネットワークを活用し、世界規模の海洋マイクロプラスチック問題の解決を目指す。舶用ボイラー大手の三浦工業(東京・港)と共同開発したマイクロプラスチック回収装置を、自社の所有・運航する船舶に搭載し、航行しながら海洋表層のマイクロプラを回収する。そこから得られた海洋マイクロプラの分布状況などのデータを蓄積し、海の汚染の「見える化」をすることで、課題解決に向けた糸口を探る。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

海洋プラスチック汚染の中でも、5ミリメートルにも満たない微細なマイクロプラスチックは、海洋中に広く拡散し、海の生き物だけでなく、人体にも影響を及ぼす可能性があるとされる。
現状では回収が極めて難しいこの海洋マイクロプラスチックについて、商船三井は独自の強みを活かして、課題解決の糸口を探る。
■まずは海洋マイクロプラの汚染状況を可視化する
商船三井の船舶技術ユニット・技術分析研究所の大内隆彰所長は、オルタナの取材に対し、「今はまだ、海洋表層のデータを集め、蓄積するステージだが、取り組みを続けていくことで、海洋マイクロプラスチック問題という大きな社会課題の解決に貢献したい」と語った。
回収するのがマイクロプラスチックなだけに、回収量は「1日で小瓶の底に少し溜まる程度」だという。「この広い海に漂流するすべてのマイクロプラスチックを船で回収するのは現実的ではない。だが、分布状況などのデータを蓄積することで、汚染状況を見える化することが、この課題解決に向けた糸口になることを期待する」(大内所長)
回収したマイクロプラスチックは、九州大学の磯部篤彦教授のチームへと送り、そこで分析した結果は、環境省が構築した漂流マイクロプラスチックのマッピングデータベース「アトラス・オブ・オーシャン・マイクロプラスチックス(通称AOMI)」に提供される。
AOMIデータベースをもとに、海水1㎥当たりの微小マイクロプラスチックの濃度や、マイクロプラスチックが開票から海の深層へ到達する経路もわかってきた。

■きっかけは「社内経営スクール」
取り組みのきっかけは、新規事業を提案・発表し採用する社内の「経営スクール」だ。海洋マイクロプラ汚染が注目され始めた2019年、若手社員らのチームが、新規事業として「商船を活用したマイクロプラ回収・調査サービス」を提案した。
この提案が高く評価され、同社は海洋マイクロプラの回収に向けて動き出す。取引先などにも声をかけ、海洋プラごみ問題への関心をヒアリングしつつ、解決の端緒となる具体策を模索した。そして2020年、長年、舶用ボイラーで取引があり、マイクロプラ回収の技術開発を進めていた三浦工業との共同開発が始まる。
当初は、停泊中の船舶が船体のバランスを保つために船内に取り入れる海水(バラスト水)からマイクロプラスチックを回収するところから始めた。バラスト水の取り込み口に回収装置を取り付け、計5隻の船を使って国内のいろいろな港で試した。

陸上での試験運転と同様の回収実績が得られ、技術的な手ごたえを得たが、第一世代の回収装置では回収できるタイミングや海域が限定される。そこで、2022年から、航海しながら常時マイクロプラスチックを回収する第2世代の装置の開発へと移った。
注目したのは、船内で常時エンジンを冷却するために海から取り込んでいる冷却水だ。この取水ラインに第2世代の回収装置を取り付けた。多様な海域のサンプルを収集できるよう、航海ルートが常に変わる不定期航路の自動車運搬船1隻に搭載した。航行中に連続的に海水を取り込むため、年間の処理水量は第1世代の約70倍だ。

■海を守るビジョンの共有が、取り組みを後押し
■取り組みをスケールさせるカギは「資金」

